「無理だ」「不可能だ」と言われていることができると、楽しい。もちろん、そんなことは滅多にない。少なくとも自分の周りでそれが起こることは、ほぼないだろう。しかしそれでも、そういうエピソードは、世の中にはちゃんとある。

 物理学が好きな僕は、それまで理論的に不可能だと思われていたことが覆ったケースをたくさん知っている。「透明マント」や「テレポーテーション」などはまさにそういうたぐいのもので、今では少なくとも原理的には可能であり、実用化も不可能ではないと考えられている。なんともワクワクする話ではないか。

 理論的に不可能と考えられていたことさえ、覆るのだ。だったら、理論的に不可能だと提示されているわけではないことなら、さらに覆る可能性は高くなるだろう。そう考えれば、新しいことにチャレンジするハードルも低く感じられるかもしれない。

 今回は、不可能を可能に変えた者たちを描く3冊を紹介しようと思う。

田中修治 『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』

 そりゃあいろんな本を読んできたし、その中には、さまざまな意味で良い本はたくさんあった。しかしここ数年、本書ほどページをめくる手を止められなかった作品は、ちょっと思いつかない。とにかく、途中で読むのをやめられないのだ。続きが気になって気になって仕方ない。毎回、どん底のさらに下みたいな場所に追い詰められながら、不死鳥の如く蘇る者たちの、「信じがたい」と形容するしかない物語にのめり込まされてしまった。