(川島 博之:ベトナム・ビングループ主席経済顧問)
韓国の2018年のTFR(合計特殊出生率、1人の女性が生涯に産む子供の数)が0.98と1を割り込んだ。これは極めて低い数字であり、何か異常事態が出現していると考えた方がよい。
人口が5000万人を超える規模の国において、このような低い出生率が記録されたことなかった。ここでは、なぜ出生率がここまで低くなったか考えるとともに、それが及ぼす影響についても考えてみたい。
韓国に大きな歪みをもたらした「国是」とは
下の図に日本、韓国、北朝鮮のTFRの推移を示す。韓国のTFRは1960年代から80年代にかけて急速に低下したが、経済発展に伴い低下することは開発途上国ではよく見られる傾向であり、特殊なことではない。
北朝鮮のTFRは韓国とよく似た動きをしている。このことは北朝鮮も85年頃まで、それなりに経済が発展していたことを示している。北朝鮮と韓国のTFRが異なった道を歩み始めるのは85年以降である。韓国はその後も低下し続けて、日本とはほぼ同水準になった。一方、北朝鮮は「2.0」前後から低下していない。これはソ連の崩壊以降、農村から都市への人口移動など、どの開発途上国でも見られる現象が停滞したことを示唆している。