「観察」を怠ると良い結果は生まれない。

(篠原 信:農業研究者)

「アクティブラーニング」最高の教材と思われるのは、NHK Eテレの「すイエんサー」大学対決編だ。アイドルを目指す女の子たちが、東大、京大などの名だたる大学の学生たちを打ち負かした。もう数年前に放映された特番だが、ぜひ再放送してほしい。できれば繰り返し放映してほしい(負けた学生はかわいそうだが)。

 なぜ女の子たちは、知識の豊富な大学生たちに勝ったのだろうか? それは、「観察」だ。

勝敗を分けた「観察」

 2階から紙を落として、滞空時間を競うという競技。京大生は豊富な知識を駆使し、すばらしい構想を披露し、その実現に向けて工作を始めた。

 すイエんサーガールは、何の構想もない。とりあえず紙を繰り返し落としてみた。

 すると、地面に水平の時は滞空するが、翻って縦になると、急速落下することに気が付いた。「翻らずに水平姿勢を維持できれば、滞空するのでは」という仮説に気がついた。翻りさえなければよい。そんな単純な開発目標でできたものは、なんと角を折っただけというもの。

 京大生は、羽のある種子を模したものやUFO形など、技巧を凝らした紙細工を開発した。落下するときの様子は大変興味深かったが、比較的速やかに落下。他方、すイエんサーガールの作った、いや、作ったなどともいえない、角を折っただけの紙は、驚異の滞空時間を誇った。

 東大生との対決の回は残念ながら直接見ていないが、回想シーンを見たところ、これも大変興味深い。A4の紙で橋を作り、どれだけの重量物を支えられるかという競技。

 東大生は建築学の知識を駆使し、力を分散させる、技巧の粋を尽くした構造物を作り上げた。

 かたや、すイエんサーガール。何の構想もない。とりあえずめいめいに、紙を折ってみた。すると、きつく巻いた紙は非常に丈夫な棒になることに気が付いた。その棒を使って試行錯誤を重ねるうち、東大生を圧倒する結果を出し、勝利(東大5kg、すイエんサーガール18kg)。