この先何が起きるか分からない最先端の技術を扱う企業のアルバック。何が起きるか分からないから選択と集中という米国型の経営には向かない。失敗も多いから成果主義の人事もしない。前回「米国型の選択と集中は、成功ではなく危機を招く」はそのユニークな経営哲学をお送りした。

 そのアルバックは、会議の方法も常識とは正反対だ。多くの企業では業務の効率化を考えて、会議は要点をはっきりさせて短時間でてきぱきとやりなさいと指示されているはず。ところがこの会社は違うのだ。

意思決定を早める「ダラダラ会議」

 先端技術を扱う業界では、新しい流れをどう判断していつ参入するのか、企業としての決断とそのスピード感が重要だ。ほんの少しの経営判断の遅れや、現場の意思統一の乱れが命取りになることがあるからだ。

 そうしたことのないよう、指示命令をトップダウンで徹底するのも1つの方法だが、同社の場合はそれとは正反対の方法を採りながら、結果的に意思決定のスピードを早め、現場の意思統一を強固にしている。

 それが、「会議はダラダラやる」というアルバック流会議である。

 最終的な意思決定は役員会や事業部会で行われるが、中村久三会長以下、役員はもちろん新入社員でも自由に参加できる「戦略研究会」や「分科会」といった会議を頻繁に行っている。

 一般的にはいかに会議のスピードアップを図るかが問題とされるが、これらの会議は「とにかく徹底して議論する」ため、朝から始まって昼に休憩を挟み、夕方まで続くといったことも少なくない。

 これには、

●会議で経営者の強い意志を社員に直接伝える
●社員の当事者意識を高める
●現場の力をスピーディーかつ最大限に引き出す
●その場で先送りせず決断する

 という狙いがあり、全社を巻き込み合意形成する全員参加型の経営を実現するために、欠かせないものとなっている。

 また、会議には「怒らない」「根に持たない」「自分のことは棚に上げてよい」「根回ししない」「問題は先送りしない」といったルールがあり、これが自由な議論を促す作用として働いている。