人工気管移植手術に関する論文、英医学誌が撤回 大半の患者が死亡

スウェーデン・ストックホルムで、世界初の人工気管移植を行うパオロ・マキアリーニ医師(中央、2011年6月9日撮影、同年7月7日公表、資料写真)。(c)AFP PHOTO/KAROLINSKA UNIVERSITY HOSPITAL〔AFPBB News

論文を米国医師会の医学誌に掲載

 私は宮城県仙台市仙台厚生病院で消化器内科医として勤務しています。医師としては今年で満4年目です。

 今回、製薬企業が日本の医学会理事にどのくらいの謝礼金などの支払いをしているか私たちがまとめた論文が米国医師会の医学誌に2019年2月4日に掲載されました。

 日本の主要な19の医学会の理事に、2016年に製薬企業から個人的な謝礼金などの名目で支払われた金額を調べた結果、9割近い理事が金額を受け取っており、合計で7億2000万円に上っていた、という内容です。

 なぜ、一介の医師である私が今回の論文作成を行おうと考えたのか、そしてその反響はどうだったのかをお伝えしましょう。

論文の原文はこちら:

「Pharmaceutical Company Payments to Executive Board Members of Professional Medical Associations in Japan」

掲載誌:JAMA Internal Medicine

(https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2723072)

なぜ製薬企業が医師に支払う謝礼金研究に取り組んだか

 私は2018年の4月頃から今回の取り組みに参加しました。

 2018年初頭から、ジャーナリズムNGOのワセダクロニクルが、製薬企業から日本の医師に支払われた金額について、ウエブ上で検索を行えるようなデータベースの作成を進めていました。

 すでにプロジェクトに参加している医療ガバナンス研究所の尾崎章彦医師に「データベースを元に医師への金額をまとめて論文として発信しよう」とお誘いを受けました。

 私は医師4年目ですが、医師であれば論文を書いたり、学会で発表を行ったりする際に企業との関わりを開示する(利益相反の開示)ことは必要であるということは知っています。

 一方で、そのこと自体を研究する意味とは何だろうと考えました。