民衆の不満を徹底弾圧、ディストピア化する中国

 しかし、何もできずに手を拱いていると、共産党員でさえも共産党ではダメだと悟るようになる。そうなれば、旧ソ連のように共産党体制が崩壊することになろう。

 とはいえ、それには時間がかかる。それまでは習近平、あるいは次の独裁者が無理矢理にこれまでの体制で突っ走って行かざるを得ない。

 今後、不動産価格が下落し、企業倒産が増え、給料が上がらず、失業者が増えれば、多くの人々が政権に不満を抱くだろう。しかし、選挙はないから民衆は政権を変える手段を有さない。デモを行うことも、政治集会を行うことも許されていない。

 習近平は自分と自分の家族、そして共産党を守るために文句を言う人々に対して徹底的に強硬な手段に出る。中途半端では、かえって反発が強くなる。そして、一度、強硬な手段を取ると後戻りできない。ある中国人は、現在、新疆ウイグル自治区で行われている非人道的な政治は、実験であり、いずれ中国全土に波及することになろうと言っていた。

 今年の春節は700万人もの中国人が海外で過ごした。日本各地を呑気に観光してバブル末期の生活を謳歌していた中国人たちも、バブル崩壊に伴い所有する不動産価格が下落したり経営する会社が破綻したり、また失業する可能性がある。その際に、政権への不満をちっとでも漏らそうものなら、インターネットを監視して盗聴器を張り巡らしている当局によって拘束されて、学習施設(収容所)に連れて行かれることになろう。そこで習近平思想を徹底的に学ばされる。これから中国に、とんでもないディストピアが出現する。

 これは悪意に満ちた予想だと思われるかも知れない。しかし、独裁の欠点を知れば、それほど的外れな予測とは言えない。今後、中国で大きな悲劇が発生した時、我々はウインストン・チャーチルの名言「民主主義は最悪の政治形態と言うことができる。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば」という言葉を思い起こすことになろう。