(文:首藤 淳哉)
この秋、出口治明さんと古典を学ぶ講座に参加している。毎月1冊、光文社古典新訳文庫のラインナップの中から出口さんがおすすめの作品を取り上げ、当日はその本にまつわるお話と(しばしば脱線するがこれが楽しい)活発な質疑応答とで、あっという間に2時間が経ってしまう。実に中身の濃い贅沢なひとときだ。
講座は全5回で、初回はダーウィンの『種の起源』、2回目はプラトンの『ソクラテスの弁明』だった。ちなみに来月予定されている3回目はヴェルヌの『地底旅行』だそう。自然科学、哲学と来てまさかのSFという流れが素敵である。
「古典を読めば、世界がわかる」と題されたこのイベント、どうしてこんなに面白いのか。もちろん博覧強記の出口さんの語り口に多くを負っていることは間違いないが、「古典新訳文庫で作品に触れる」という点も大事なポイントだと思う。実際、このレーベルのおかげで初めて最後まで読み終えることができた古典がたくさんあるからだ。
新しい文庫レーベルの誕生に胸躍らせた
2006年9月、創刊8タイトルがずらりと店頭に並んだのを目にした時の興奮はいまだにおぼえている。新しい文庫レーベルの誕生に胸躍らせたのは、学生時代のちくま学芸文庫の創刊以来かもしれない。白地にシンプルな線画が配された洗練されたカバーデザイン、それに「いま、息をしている言葉で。」という魅力的なコピー。「これまでになかった画期的な文庫が登場した!」ということが一目瞭然でわかった。
『いま、息をしている言葉で。「光文社古典新訳文庫」誕生秘話』は、創刊編集長である駒井稔さんの回想録。本を愛するすべての人に全力でおすすめしたい素晴らしい一冊だ。