本来なら今年の秋は、日韓両国で、この共同宣言20周年を盛大に祝うはずだったのだ。ところが、韓国が10月10日から14日に開いた国際観艦式で、自衛隊の旭日旗の使用を認めないとしたことで、自衛隊が不参加になるという事態が起こった。さらに10月30日には、韓国大法院(最高裁判所)が、新日鉄住金に対して、植民地時代の徴用工である4人の原告に対して、一人あたり1億ウォン(約1000万円)の賠償を支払う判決を下した。三菱重工業の同様の判決も、今月29日に控えている。

 そして第3弾が、11月21日に韓国政府が行った驚愕の発表だった。2015年末の日韓慰安婦合意に基づいて、日本政府が10億円を拠出し、韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」を解散するというのだ。

 これには安倍首相も呆れ顔で、「国際約束が守られないのであれば、国と国の関係が成り立たなくなってしまう」と述べた。まさに正論だが、上記のような理由で、いまの文在寅政権は、平衡感覚を失いつつあるのである。

3・1独立運動100周年で「反日攻勢」は最高潮に

 今後、日本が最も警戒しなければならないのは、来年3月1日の「3・1独立運動」100周年である。日本の植民地時代に朝鮮半島で起こった最大の独立運動(逮捕者約5万人)の100周年を、南北合同で盛大に挙行しようと、文在寅大統領が金正恩委員長に持ちかけているからだ。

 今年9月18日から20日まで文大統領が北朝鮮を訪問した際に発表した「9月平壌共同宣言」の第4項の3には、「3・1運動100周年を南北共同で記念し、このための実務的な方策を協議していくことにした」と明記している。換言すれば、旭日旗、徴用工、慰安婦と続く韓国の「反日攻勢」は、来年3月1日の「山頂」を目指した途上とも言えるのである。

韓国政府、慰安婦財団の解散を発表

【写真】「和解・癒し財団」の解散が発表された日、韓国ソウルの日本大使館前の慰安婦像のそばではデモを行う人々の姿も見られたが、一般の韓国人はほとんど無関心を装っているという(2018年11月21日撮影)。(c)Jung Yeon-je / AFP〔AFPBB News

 最後に、あるソウル在住の韓国人ジャーナリストが「和解・癒し財団」の解散が発表された当日、私に送ってきたメッセージを紹介しよう。

「本日(21日)の韓国政府の発表に関して、一般の韓国人はほとんど無関心を装っている。若者たちが一番見ているネイバー・ニュースにも、ほとんど関連記事が出ていない。

 文在寅政権は、これ以上の支持率低下に歯止めをかけるには、『定番』の反日攻勢しかないと判断したのではないか。だが韓国国民の専らの関心は、景気問題であって、いまさら慰安婦問題ではない。私の周囲の中小企業を見れば、不景気で社員の給料の遅配が起こっていて、失業者は増える一方。潰れる会社や店も続出している。

『20年ぶりに第二のIMF時代が到来する』という声も聞こえ始めているのだ。日本経済に手を差し伸べてほしいというのがホンネだ」