昨年8月の記事で、パリの超高級ホテルの盛況ぶりをご紹介した。世間一般の不景気な話題とは対照的に、1泊100万円クラスの部屋が連日満室であるというものだったのだが、その高級ホテル事情が、ここへきてまた大きな動きを見せている。
エッフェル塔のはす向かいにシャングリラが開業
パリは今まさに、空前の高級ホテル開業ラッシュなのである。
その中でも最も新しいのが、昨年12月にオープンした「シャングリ・ラ ホテル」。セーヌをはさんで、エッフェル塔のはす向かい、16区の高級住宅街に隣接するエリアにある。
街の景観そのものが歴史遺産、観光資源になっているパリの常として、更地に全く新しい現代建築が建つというのは稀である。
このホテルもまた、もともとあった歴史的建造物を生かしつつ、内部に大幅に手を入れて完成させたもの。
そのもともとの建物というのが、皇帝ナポレオンの甥の息子、プリンス ロラン・ボナパルトの館として19世紀末に建てられたものであり、ギリシャ、デンマークのプリンスと結婚した娘の婚約式の舞台にもなったという由緒がある。
その後、この館の持ち主は、金融会社、国と変遷し、2006年に政府がこれをシャングリ・ラ グループに売却し、新たなホテル開業に向けての準備が始まったというわけなのだった。
いかにも格式ありげで、しかも瀟洒なたたずまいの門構え、正面玄関を入れば19世紀の建造物としてのしつらえは健在だ。
さらに、上階に上れば、ベルサイユ宮殿かオペラ座にでも来てしまったかというような天井の高い豪奢なサロン。
かつては、それこそプリンセスの婚約披露もここで行われたという場所で、当時、パリの中でも最も美しい広間の1つに数え上げられていたという。