前回のコラムでは、「断食」を取り上げた。文字通り、食を断つのが「断食」である。そして前々回では、肉食を断つ「ベジタリアン」について取り上げた。
(前回)「苦しいのは最初だけ、3泊4日の「断食修行」体験記」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54425
(前々回)「楽園ビーチリゾートの衝撃的「奇祭」を知っているか」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54300
今回も引き続き、食にまつわる話題を取り上げてみたい。それは「山伏(やまぶし)体験修行」である。
山伏とは、日本特有の山岳信仰にもとづく修行者のこと。150年前の明治維新政府による「神仏分離」以前まで修験者と呼ばれていた。修験道の修験者である。
「山伏体験修行」がなぜ食の話題になるかというと、食に関しては断食やベジタリアンと真逆の関係にあるからだ。山伏修行では、食事は朝昼晩と一日三度。一汁一菜の簡素な食事でありながら量は多く、しかも出されたものはすべて平らげないといけない。断食もラクではないが、出されたものをすべて食べきるというのもラクなことではない。そして修行が満願成就したあとに味わう豪勢な「精進落とし」との大きなコントラスト。
今回は、成田山の「断食参籠修行」に引き続き、同じ年(2010年)の秋に参加した「山伏体験塾」について紹介したいと思う。これもまた「断食」と同様、「非日常体験」であり、しかも意図的に心身に厳しい制約条件を課すことによって精神的な覚醒を促す、日本型修行の一つの形でもある。
場所は、山形県の出羽三山(下の地図)。月山と羽黒山、湯殿山で構成されている山岳信仰の聖地である。関西では大峰山が有名だが、関東地方に在住していることもあり、出羽三山の方を選ぶことにした。このコラムが、「一度くらいは山伏を体験してみたい」と考えている人、日本型修行のあり方に、なんらかのヒントを得たいと思っている人に参考になれば幸いである。
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