日本郵政は郵便事業をどう位置付けるべきなのか?(写真はイメージ)

 郵便物の配達を平日のみに限定する方向で検討が始まった。

 背景にあるのは深刻な人手不足と働き方改革だが、それだけが理由ではない。日本郵政グループは鳴り物入りで上場を果たしたものの、郵便事業の業績低迷に苦しんでいる。土曜配送をなくすことでコストを削減したいというのが同社のホンネと考えられる。

 同社は、公益事業としての性格を残しつつ、一方では株式を上場するという中途半端な状況が続いている。土曜配送をやめるには法改正が必要だが、これをきっかけに郵便事業を社会としてどう位置付けるべきなのか、ゼロベースで議論するのが望ましい。

サービス内容を変えるには法改正が必要

 郵便は規制事業となっており、郵便物をどう配達するのかについては郵便法の縛りを受ける。現在の郵便法では、月曜から土曜までの週6日、1日1回の個別配達を原則としている。このような規制が存在しているのは、言うまでもなく、国民にとって不可欠なサービスにおいて地域間の格差が生じないようにするためである。

 郵便事業は政府が運営していた時代から、全国均一のサービスを利用しやすい料金で提供する義務が課されており、民営化後の日本郵政グループにも継承されている(いわゆるユニバーサルサービス)。このためサービス内容を変えるためには、法改正等の措置が必要であり、上場企業としては大きな制約条件を抱えているといってよい。

 総務省は深刻な人手不足に対応するため、現状の規定を変更し、土曜日の配達を取りやめる方向で調整を進めている。今のところ速達や書留に関しては毎日の配達を継続する方針で、普通郵便のみが平日限定となる可能性が高い。

 職業別の有効求人倍率における運輸・郵便事務の職種は6倍と極めて高い数値となっており、年末の繁忙期には配達要員を確保できないという状況に陥っている。

 日本郵政グループの事業子会社で郵便事業を手がける日本郵便では、週6日の配達を維持するため、土曜日に14.6万人が出勤しているという。土曜配達をやめればシフトがシンプルになり、深夜労働の割合も減るので、土曜配達に直接携わる労働力以上の削減効果が得られる可能性が高い。

 一部の郵便局では、配達員の仕事がブラック化しているとの指摘も出ている現状を考えると、労働環境の改善は急務といってよいだろう。