では円滑なコミュニケーションのコツはなんでしょうか? よく言われているのは「すぐやること」。それから「報連相(報告・連絡・相談)を密に行うこと」です。もちろんこれらは間違いありませんが、もしもあなたがそれだけで「よし」としているなら、残念ながらそれは二流のビジネスマンの発想です。ビジネスの状況はスピーディーに移ろいでいきますから、「すぐやる」「報連相」だけでは、後れを取ってしまうのです。

 一流のビジネスマンは「すぐやる」ことと「速く確実に終える」ことは違うことを知っています。そして、頭の中で伝えたいこと、やらねばいけないことが複雑に絡み合ったまま、相手と連絡を取ったり動き出したりすることが、余計に事態を混乱させることも理解しています。

 彼らが重視するのは、「まず頭の中を整理し、優先度を決めること」。同時に「それを相手に正しく伝え、事態を眺める目線を相手と合わせること」です。

 これができれば、ラクに速く確実に物事を進めることができるのですが、実はこれを簡単にこなしてしまう夢のようなツールがあるのです。ご存知でしょうか?

ソラ・アメ・カサが全てを解決する

 その夢のようなツールこそ、「ソラ・アメ・カサ」です。これはマッキンゼーの日本オフィスが考案した思考のフレームワークで、コンサルタントファームではすでに共通ツールになっているのですが、実は小学生でも使いこなせるくらい簡単なものなのです。

 「ソラ・アメ・カサ」の仕組みは簡単です。

・ソラ「空を見ると曇ってきた」=事実

・アメ「雨が降りそうだ」=解釈

・カサ「傘を持っていこう」=判断

 というシンプルな構造です。

 事実を整理し(ソラ)、そこからどうなりそうかと解釈し(アメ)、ゆえにどんな判断を下し打ち手や行動を提案するか(カサ)。3つの要素を一言で表現したのが「ソラ・アメ・カサ」です。

 この3つをセットにして考えると、複雑に絡み合った事象のつながりがシンプルに整理され、論理的にムリも飛躍もない判断ができます。さらに、自身の思考を整理するときだけでなく、相手に物事を簡潔に、正しく伝達する際にも「ソラ・アメ・カサ」は絶大な威力を発揮してくれます。

 実際に「ソラ・アメ・カサ」の威力を検証してみましょう。

ソラ「空を見ると曇ってきた」=事実

 このように、ソラ・アメ・カサの要素が1つだけでは、相手に何も伝わりません。

 では、要素が2つになったらどうなるか。

ソラ「空を見ると曇ってきた」=事実

アメ「雨が降りそうだ」=解釈

 これだと、「そうですね。だから何でしょうか?」と相手は考えるでしょう。外出しないほうがいいのか、テルテル坊主を作るのがいいのか、あれこれ勝手な解釈をしてしまう可能性があります。

ソラ「空を見ると曇ってきた」=事実

カサ「傘を持っていこう」=判断

 事実と判断だけだと、「大げさだな」「心配性だな」「確かに」とあなたと相手の意見にブレが生じる可能性大です。

 解釈と判断だけではどうでしょう。

アメ「雨が降りそうだ」=解釈

カサ「傘を持っていこう」=判断

 このように相手と解釈の根拠を共有しないままに判断を伝えると、「そうかな?」「私はそう思わない」と意見が割れる可能性が出てきます。

 いかがでしょう。ソラ・アメ・カサの2つの要素だけではなかなか相手に思いが伝わらないのがお判りいただけたでしょうか。

 確認のためソラ・アメ・カサと3つの要素を並べてみます。

ソラ「空を見ると曇ってきた」=事実

アメ「雨が降りそうだ」=解釈

カサ「傘を持っていこう」=判断

 これなら自分自身でも、素直に違和感なく頭が整理され、正しく判断ができますし、ソラ・アメ・カサを踏まえて相手に話すと、こちらの考えが正しく伝わり、的確に判断してもらえるのです。

 そう、物事を決めるプロセスには「伝えることを話す方が決める」「聞いた内容で相手が判断する」の2段階があります。ソラ・アメ・カサはこの2つのステップをいっぺんに実行してくれる優れたツールなのです。