ここ数年、大手企業によるCVCファンド設立が相次いでいる。ベンチャー企業からも有益な資金調達手段として注目されており、オープンイノベーションを語る上でも「CVC」は欠かせない用語の一つと言える。

 今年1月にはルノー・日産自動車・三菱自動車が「アライアンス・ベンチャーズ(Alliance Ventures)」を設立。今後5年間で最大10億ドルの投資を行うと発表して大きな話題を呼んだ。

 他にもKDDIやヤフー、パナソニックに三井不動産、果ては日本郵政と、様々な分野の著名企業がこぞってCVCファンドを設立している。多方面から注目されるCVCとは一体何なのか、企業側の目的やメリットを押さえておこう。

CVCって何? VC(ベンチャーキャピタル)との違いは

 CVCとは「Corporate Venture Capital(コーポレートベンチャーキャピタル)」の略だ。投資を本業としない事業会社が、自社の事業分野とシナジーを生む可能性のあるベンチャー企業に対して投資を行うことや、そのための組織を指す。CVCファンドは事業会社の自己資金で組成され、運営は社内の投資部門や子会社、もしくは外部のVC(Venture Capital、ベンチャーキャピタル)に任されることが多い。

 自己資金で投資を行うということは、他の投資家たちを気にする必要が無いということだ。M&A(買収)を行った場合ほどの強制力は無くとも、投資先企業への発言力は大きい。良好な関係性を構築できれば、事業シナジーを実現するという目的に向かって、より効果的な投資を行なうことができるだろう。

 では、従来の「VC」との違いは何だろうか? CVCもVCも、事業会社がスタートアップに投資を行う仕組みを指すという点は同じだが、その目的には大きな違いがある。

 VCファンドは主にキャピタルゲインを狙って設立・運用される。事業会社や金融機関、機関投資家等から資金を集め、有望なベンチャー企業に投資。その企業の「数年後の社会的評価」を予想し、上場した際の売却益を狙うのだ。その性質上、出資対象となるスタートアップは必ずしも出資元の事業に関連する取り組みを行っている必要はない。

 一方、CVCの主な目的は本業の成長や拡大にある。よって投資対象も、協業することで新たな利益を生みそうだと判断されたベンチャー企業に絞られる。投資の専門会社が運営するVCファンドと違い、基本的には事業会社である大企業やその子会社が自己資金を使って設立・運営することが多い。

図1:CVCとVCの違い

 CVCを活用すれば、事業会社側は自社で一から研究を始めたり開発したりするよりもずっと低いリスク・低いコストで新規事業を立ち上げることができる。スタートアップ側にしても、自社の事業内容に関連の深い大手企業とのパイプができることは、ともすれば資金以上に価値あるものだろう。初めから協業、つまりオープンイノベーションを見据えての資金提供であればなおさら、多くの成長機会が期待できる。