今、全世界でも最も閉鎖的な国といえば、北朝鮮の名をまず挙げる向きが多いだろう。
確かに北朝鮮の内部での出来事は、外部にはまず分からない。カルト風の独裁支配体制が国家の機能に秘密のベールを厚くかぶせているのだ。
だが、日本にとって、その秘密の国、北朝鮮の動向は極めて重要である。日本は、北朝鮮に関する情報をあらゆる方面から収集するよう努めなければならない。
その意味で、米国の首都ワシントンに拠点を置く有力研究機関「ピーターソン国際経済研究所」が1月31日に公表した北朝鮮内部の政治・経済情勢についての調査報告の内容は、注視すべきだろう。
その報告の結論を総括すれば、北朝鮮は従来の中央集権の計画経済では民間末端から自然発生するブラックマーケット(闇市)的な市場の広がりを抑えられず、その拡大によって政権存続の根幹を揺さぶられている、というのである。
90年代半ばから北朝鮮に違法の市場が誕生
米民主党系の民間有力研究機関「ピーターソン国際経済研究所」は1月31日、北朝鮮内部の政治経済情勢についての調査報告を発表した。
報告の作成にあたったのは、同研究所の副所長でアジア経済専門家のマーカス・ノーランド氏と、北朝鮮経済に詳しいステファン・ハガード研究員である。2人が共同でまとめた「変化の証人=北朝鮮の難民の考察」と題する報告を研究書の形で発表した。
2005年と2009年に韓国と中国で行った、北朝鮮難民それぞれ数百人を対象とした聞き取り調査を主体とした内容である。
同報告は、北朝鮮指導部が経済改革を抑える方針を強めながらも市民末端での市場経済志向が激しく、その動きが政権のイデオロギー面を極めて不安定にしていると指摘した。
北朝鮮では建国以来、ソ連型共産主義をさらに過激にした思想に基づき、資本主義経済は否定され、中央が統制する計画経済が実行されてきた。