前回の記事では、W杯ロシア大会で1次予選を突破してベスト16に進んだ西野ジャパンに対して、サッカージャーナリストたちが高く評価していることを批判した。特に、決勝トーナメント1回戦で、優勝候補の一角のベルギーをあと一歩のところまで追いつめたにもかかわらずロスタイムで逆転負けした試合については、「不思議な負け」ではなく、完全な西野朗監督の采配ミスであり、2012年にエルピーダを倒産させた坂本幸雄社長(当時)を髣髴とさせることを論じた。
(前回の記事)「半導体技術者が斬る!西野ジャパンはエルピーダだ」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53773
サッカージャーナリストたちの評論には、もう1つ不満がある。今回から、ビデオアシスタントレフェリー(VAR)とリアルタイムデータ(RTD)の2つのIT技術が導入され、W杯がIT化の道を進み始め、ビッグデータの時代に突入しているにもかかわらず、『月刊フットボリスタ(footballista) 8月号』の久保佑一郎氏の記事以外には、データを定量分析した記事が1つも見当たらなかったことだ。久保氏以外の著名なサッカージャーナリストたちは、従来通りの定性的かつアナログ的な評論を行っているに過ぎない。
2022年のカタール大会以降では、RTDのようなビッグデータをAIで分析するなど、RTDを有効活用した国が勝ち上がるだろう。そのためには、各国のコーチ陣には、優れたデータアナリストが必要になる。そして、データを定量分析して記事を書くことができないサッカージャーナリストは、淘汰されるのではないかと思う。
本稿では、W杯ロシア大会で導入された2つのIT技術について説明する。次に唯一、定量的なデータ分析を行った久保氏の記事を紹介したい。最後に、カタール大会で日本がベスト8以上に進出するために必要不可欠な準備について論じる。