自治医科大学(同大学のホームページより)

 日本専門医機構(以下、機構)から膨大な内部資料が流出している。

 時間をかけて改めていたところ、平成30年5月16日付、日本眼科学会から吉村博邦理事長への質問状が見つかった。愛知県の眼科専攻医(=専門医研修を受ける医師)増員に関するものである。

 背景から説明しよう。新専門医制度では地域偏在を助長しないよう、五大都市圏においては専攻医数の上限が厳しく決められているはずだった。

 しかし愛知県の中京病院眼科の専攻医が(日本眼科学会にも知らされないまま)いつの間にか増えていたのだそうだ。

一病院に便宜を図った機構

 この質問状は、その経緯と理由を問いただすものだった。なおこれは再度の質問状であり、初回の回答では日本眼科学会として納得できかねる、といった詰問とも言える内容であった。

 筆者がさらに内部資料を調べたところ、2月15日付、中京病院眼科の加賀達志医師から機構事務局長代行の栄田浩二氏に宛てた長文の電子メールが見つかった。

 内容の主眼は中京病院眼科の増員を依頼、というよりも「請願」に近い内容でもあったことは言うまでもない。それも3次募集開始の前日にである。

 ただし加賀氏の名誉のために付け加えるが、機構側の拙速な制度開始によって「現場で実際に発生した問題点、定員の考え方の問題」といった氏の意見はその大半が個人的に賛同できるものであった。

 この件で最も重要な問題は、2月15日以降、日本眼科学会にも知らされず、機構が五大都市圏の上限規制を破り、かつ、一病院に便宜を図ったことにある。

 しかも機構側が基幹施設の専攻医数などを「誰も知らぬ間に変更」していた、という事実はこの事例にとどまらない。