国内でデジタル化が遅れている産業の一つと言われてきた不動産業界で、最先端のテクノロジー活用が進みつつある。人工知能(AI)を活用した不動産価格の分析、VR(仮想現実)技術やスマートフォンを用いた物件の内覧、不動産会社の店舗に出向かずインターネット電話を介して物件の重要事項説明(重説)を受けられる「IT重説」など、この1~2年のうちにさまざまな「不動産テック」が着実に広がり始めている。
そうした不動産テックのなかで、業界の注目を集めているサービスがある。データベースマーケティングを手掛けるベンチャー「おたに」の創業者、小谷祐一朗氏が開発した不動産価格予測サービス「GEEO(ジーオ)」だ。さまざまな要因が価格に影響をおよぼすために値ごろ感を判断するのが難しい不動産の価格を、独自開発した統計解析のアルゴリズムによって、物件ごとにピンポイントで推計する。
小谷氏は2014年11月、建物の構造や建築年などから不動産の予測成約価格を算出する機能を、主に一般の消費者を対象に無料公開して以来、地価の推定や建物の原価算出などGEEOの機能を拡充し続けてきた。最近は、GEEOの業務利用を始めた不動産会社もある。また大手不動産会社の中には、多数のGEEOのアカウントを取得するところも出てきている。
GEEOの名称に見覚えのある人がいるかもしれない。複数のビジネス誌がしばしば、不動産関連の特集記事でGEEOを用いた将来予測を展開しているためである。例えば、週刊現代の「10年後に土地の値段が上がる駅・下がる駅」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52457)では、全国の主要776駅の地価の騰落をGEEOで予測した。