政府は10%への増税に際して、財政出動を強化することでマイナスの影響を和らげようとしている。一部からは増税分のほとんどを景気対策に投入すべきとの声も上がっているが、こうした手法に対しては異論もある。そもそも消費増税によって景気が悪化するというのであれば、増税しないことが最善策であり、増税による税収増を景気対策につぎ込むのは本末転倒という考え方である。
日本は内需経済に移行しているはずだが・・・
消費増税の是非という命題に対して、正しい結論を得るためには、そもそもなぜ景気が上向かないのかという根本的な部分に目を向ける必要があるだろう。
日本経済が弱くなっている原因が、単純で単一なものとは考えにくいので、正しい処方箋を書くのはそう簡単ではない。ただ、ひとつだけ言えることは、数字の上では日本は内需経済型に移行しているはずなのに、いまだに輸出依存体質から脱却できていないという現実である。
デフレが続いた過去20年を振り返ると、その中で相対的に景気が良かったのは2003年から2007年までの4年間と、2015年から2018年までの4年間である。この2つの期間において経済が拡大した理由は明白で、米国の好景気を背景とした輸出の増大である。
2003年から2007年までの景気拡大は、リーマンショック前の米国バブル経済の恩恵を受けたものであり、今回の景気拡大はトランプ経済の影響が大きい。
日本のGDPに占める輸出の割合は限りなく小さくなっており、数字の上では日本はもはや輸出立国ではない。だが、現実の経済は米国の好景気を背景とした輸出拡大に依存しており、従来から大きく変わったわけではない。
製造業の大半は現地生産化が進み、国内では製造業からサービス業にシフトしている現状を考えると、本来なら、内需がもっと活発になってよいはずだ。内需が拡大しない理由としては、将来への不安から支出が抑制されている、政府の規制によって新しい産業の創出が邪魔されている、雇用が硬直化している、といったあたりが考えられる。
国内工場の建設や工場労働者の賃金増加が内需を押し上げる時代ではないことを考えると、内需不振は構造的な問題である可能性が高い。