まず、根回しの順番を間違えないことです。根回しは「横」から着手しましょう。横の根回しは「現場の実行部隊」の根回しです。上司や他部署といった「上」の根回しで意思決定をしてもらっても、現場が動いてくれなければまったく意味がありません。根回しは関係者を動かして結果を出すことが目的です。横の根回しをせず「経営会議で決まったから」と言って上から目線で動かそうとするのは最悪です。

 現場には現場の優先度があります。それを「そんなことは知らない」と無視するのは、ムダに敵を作るだけです。人は感情の生き物です。自分を大事にしてくれる人、喜ばせてくれる人、裏切らない人ならば優先的に動いてくれます。

 それに、「横」の根回しは「上」の根回しよりも投資効率が優れています。会社には人事異動がつきものです。上司など「上」は異動や定年でいなくなるかもしれません。けれども、自分より立場が弱い後輩やスタッフは、毎年増えていきます。現場の実行部隊の味方が増えれば増えるほど、組織を動かしやすくなります。

 ただし、根回しの時だけ顔を出すのは止めましょう。「自分の得になる時しか動かないヤツだ」と下心を見透かされたら終わりです。長年の信頼も一瞬で弾け飛びます。根回しで大事なことは、損得よりも「あなたの味方です」と思ってもらうことなのです。

「巻き込み」よりも「共通の敵探し」

 こちらが意図をしなくても、他部署、上司、取引先などと意見が対立してしまうことがあります。対立した時、真正面から争うのは得ではありません。対立は避けられないものですが、最小限にしたいものです。論客は、議論で勝っても政治で負けます。“論の立つ奴”が嫌われて出世できないことは、実は人事の世界では常識です。