いつどんな世の中に生きていても、未来がどうなるかは誰にも分からないものだが、現代はよりその傾向が強くなっているのではないかと感じる。

 一昔前であれば、「技術」は、人々が欲しいと思うモノを生み出すのに多く使われたのではないかと思う。冷蔵庫や洗濯機などの生活必需品や、飛行機やダムなど多くの人の生活に関わるものなど、先に需要があり、それを生み出すために技術が使われるということが多かったのではないだろうか。

 しかし、僕らが生きている世の中は、既に多くの人が必要なものを手に入れている状態だと言える。ここから、「技術」は一体何を生み出していくのか。需要を起点にしない以上、予測は難しい。

 また、モノだけでなく価値観などもどう変わるか分からない部分があるだろう。一昔前であれば、「大企業に勤め、結婚して子どもをもうけ、家を建てる」という生き方が、誰もが憧れるスタンダードとして君臨していたはずだ。しかし、働き方や生き方に多様性が生まれ、現代では多くの人が目指すようなスタンダードは存在しないと言っていい。多様性は今後も増していくだろうし、その過程でどんな新たな価値観が生まれてくるのか、予測は難しいだろう。

 そんな時代に、未来がどうなるのかを感じさせてくれる3冊を紹介しようと思う。

「幸せだ」という実感を得るための方策

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』(ルトガー・ブレグマン著、野中 香方子訳、文藝春秋)

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』(ルトガー・ブレグマン著、野中 香方子訳、文藝春秋)

 歴史を振り返ってみれば、ありとあらゆる事柄が現在よりも圧倒的に悪かったことが分かる。ほんのつい最近まで、ほとんどの人は貧しくて飢えており、不潔で、不安で、愚かで、病を抱え、醜かった、というのが世界の歴史の真実だと著者は書く。それと比べれば、現在はあまりにも豊かであり、満たされているのだ。

 しかし、著者はこんな風に指摘する。

“ここでは、足りないものはただ一つ、朝ベッドから起き出す理由だ”