沖縄に自生する柑橘類「シークヮーサー」を題材に、人々と柑橘類の“共生”のありかたを追っている。前篇では、長らくほぼ個人利用にとどまっていたシークヮーサーが、20世紀後半より産業用にも利用されだしたという変遷をたどった。
後篇では、人々とこの柑橘類の今後の関係を見ていきたい。沖縄県大宜味村(おおぎみそん)で採取されるシークヮーサーの果汁粉末を利用した食品が誕生した。科学研究の視点が加わり、人々はシークヮーサーが人にもたらす恩恵をさらに生かそうとしているのだ。
長寿の村「元気なのはシークヮーサーを食べてきたから」
大宜味村は、沖縄本島の北部「山原(やんばる)」地域の一部をなす村だ。沖縄県内のシークヮーサー収穫量の半分以上を同村で占めている。
1993(平成5)年には「長寿日本一宣言」をした。3000人強の人口のうち、90歳以上が約150人、さらに100歳以上も10人いる。最高齢108歳の女性は今も自炊や散歩を楽しみ、男性の最高齢102歳の村民はバイクやカーゴを運転してシークヮーサー畑で農作業にいそしんでいるという。
村のシークヮーサーを全国でトップセールスしてまわるのが村長の宮城功光氏だ。「村のおじいさん、おばあさんが元気なのは、シークヮーサーを食べてきたおかげです。肌の艶がよい理由を尋ねると『小さいときからシークヮーサーを食べていたからだよ』とおっしゃいます」と話す。
豊富な成分「ノビレチン」を生かすための研究と成果
大宜味村のシークヮーサーに、新たな活用法が登場する。食や健康に関する事業に力を入れているロート製薬により、シークヮーサーの果汁粉末を配合した食品が3月に発売されるのだ。
同社はここ数年、沖縄の食や農業に関心をもち、各種事業を展開してきた。2014年には有機加工食品工場を営む「ケレス沖縄」を小会社化し、沖縄を拠点とする事業をさらに模索していた。