2018年に入り、米WTI原油先物価格は1バレル=60ドル台半ばで堅調に推移している。好調な世界経済がもたらす原油需要の増加期待と、OPECをはじめとする主要産油国の協調減産が下支えとなり、昨年半ばから緩やかな上げ相場が続いている。
だが、この傾向はいつまで続くのだろうか。
今年に入ってから、原油価格の上昇は投機資金が牽引する色彩が強まっている。欧米の原油先物市場で、投機資金による買い越しが拡大している(1月29日付日本経済新聞)からだ。米WTI原油先物の買い越し幅は3週連続で増加し、約72万枚と過去最高を更新した(半年前の1.7倍)。北海ブレント原油先物も2017年7月から急増し、半年前の2.7倍となった。
原油の世界的な需給バランスも不透明だ。昨年第2四半期から第4四半期まで、需給バランスは引き締まった状態が続いていたが、今年第1四半期は昨年に比べて需給が緩むとされている。まもなく暖房油の需要ピークが過ぎガソリン消費が増加するまでの端境期に入ることから、「持ち高調整の売りが出る」との警戒感が出始めている。足元ではシェール企業が増産に備えた「売り」が増加する兆しも出始めている。
原油の強気相場の最大の功労者であるサウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は、スイスで開催された「ダボス会議」で1月23日、「需給は改善に向かっている」としながらも「マーケットの脆弱性、そして潜在的な『ブラックスワン』を警戒している」と発言した。
ブラックスワンとは「マーケットにおいて事前にほとんど予想できず、起きたときの衝撃が大きい事象」のことを指す。元ヘッジファンド運用者としての経験を持つナシーム・ニコラス・タレブが2006年に『ブラックスワン』と題する著書を出した直後の2008年にリーマンショックが起きたことから、この言葉は人口に膾炙した。