政府は28日の関係閣僚委員会で、来年度以降の温暖化対策の方針を決めた。

 注目されるのは、環境税(地球温暖化対策税)を2011年から実施することを決める一方、2013年度に予定していた排出権取引の制度設計を先送りしたことだ。

 これまでの論争で財界が集中砲火を浴びせたのが、この排出権取引である。これは、排出される温室効果ガスを取引するのではなく、それを排出する権利を取引するものだ。「排出権取引」と呼ぶのが学問的に正しいが、排出権という言葉が反感を買うため「排出量」が政府の公式用語になった(ここでは学術用語に統一する)。

 11月29日~12月11日にメキシコ・カンクンで開催されたCOP16(国連気候変動枠組み条約締約国会議)でも、2013年以降の温暖化対策の結論が先送りされた。現在の京都議定書の延長には日本が強く反対しており、世界的な温暖化対策の枠組みも怪しくなってきた。

鳩山イニシアティブは実現不可能

 鳩山由紀夫前首相が国連で「2020年に1990年比25%減」という「鳩山イニシアティブ」を発表し、「グリーン」や「エコ」が民主党政権の看板だったが、ここに来て急に現実主義になったのは、エネルギー関係の企業や労組の反発で選挙が危なくなるのを恐れてのことらしい。

 迷走は民主党のお家芸だが、これは悪くない。鳩山イニシアティブは実現不可能だというのが、専門家の一致した意見だからである。

 米国でも、地球温暖化対策を看板にしてきたオバマ政権が少数与党になり、議会の反発で温室効果ガス排出抑制法は廃案になった。議会には地球温暖化について懐疑的な意見も多く、「環境バブル」が崩壊し始めたようだ。

 こうした問題は、メディアでは「環境問題に抵抗する財界」という図式で見られやすいが、問題はそれほど単純ではない。企業が過大な負担を負うと、価格への転嫁や企業の海外移転などによって、国民全体が損失を被るからだ。