東日本大震災以降、建物に太陽光発電が設置されているのを見かける機会も多くなってきました。そのような中、太陽光発電を単に販売するのではなく、事業者が建物所有者の屋根を借りて太陽光発電を設置する「第三者所有モデル」が、じわじわと広がってきています。
太陽光発電の「第三者所有モデル」は、大きく分けて2種類あります。
1つは、事業者が建物所有者から屋根を借りて、自らの費用で太陽光発電設備を設置し、電力会社に売電して収入を得る「屋根借り」(建物所有者は屋根の賃料をもらえます)。もう1つは、屋根を借りて太陽光発電を設置した事業者が、建物所有者に電力販売も併せて行うものです。
屋根借りは主に公共施設で広がってきた
1つめの「屋根借り」は、東日本大震災を受けた一連の対応の中で、神奈川県が公共施設の屋根を貸し出して注目を集めました。その後、費用負担が無く太陽光発電を公共施設に設置でき、防災にも役立つという点が自治体に受け、次々と多くの公共施設の屋根が太陽光発電用に貸し出されることとなります。
最近でも大阪府、福島県いわき市、兵庫県西宮市、福岡県、埼玉県などで屋根の貸出募集が行われるなど、「屋根借り」の事業モデルは主に自治体の公共施設で広まっています。
住宅では、ソフトバンクが2012年12月に、屋根を20年間借り受けて太陽光発電を設置する「おうち発電プロジェクト」を発表し、1000件限定で屋根を募集しました。屋根を貸した住宅では、太陽光発電からの電気は利用できないものの、一定の賃料がもらえる、ソフトバンクの携帯電話の通信料の割引が受けられる、太陽光発電を非常用電源としても活用できるなどのメリットがありました。
現在は定数に達し、応募は締め切られています。しかしながら、その後、住宅の屋根借りは、全国的に拡大しているとは言えない状況です。
また、住宅同様に、工場・倉庫・オフィスなどの業務・産業用建物の屋根借りについても、年間100円程度/m2(月間ではありません年間です)という屋根賃料の低さや、20年程度という長期契約がネックとなり、設置手法として一般的になっているとは言えない状況です。