市場の玄人も金本位制を唱える
遂にはジェームズ・グラントのような専門家までが、金本位制の復活を高唱するようになる。ちなみに米国債市場つまりは米金利マーケットを見る人で、グラントの名を知らなければもぐりであろう。
ニューズレター「Grant's Interest Rate Observer」を1983年以来出し続けてきたグラントとは文字通り金利の観察者として評価の確立したベテランであって、そんな玄人まで金復活を言うことが一種の驚きを与えるのである。
グラントはニューヨーク・タイムズ(本年、以下同)11月13日付にHow to Make the Dollar Sound Againと題して寄稿、金本位制復活論議をメディアの表舞台に押し上げた。
のみならず、12月6日には夜の長寿テレビ番組チャーリー・ローズ・ショーにも出演し、いわばアメリカの寝室にも議論を届かせた。
ゴールドを、と迫る理由の数々
金論議が見せた盛り上がりの背景には、火付け役ゼーリックすらよく予想し得なかったかもしれない要因の輻輳(ふくそう)がある。仔細に見るにつけ、根はどうして、深いと思わせるものである。来年につながる論点を箇条書きにしておこう。
第1に、太ったバンカーたちを血税でベイル・アウト(救済)したことに対する中間層の反発と、その先棒を担いだとみなされるベン・バーナンキ連銀への反感が底流にあった。
第2に、連邦政府債務残高の高進と、連銀がその引き受けに汲々とすることへの危機意識がある。
これは経済倫理の喪失として米国の良心を刺激する。のみならず、米国債がやがては中国の手に落ちることをとらえ、国益を毀損するものとしても論じられる。