2017年8月にアメリカ穀物協会から「持続可能性に貢献するアメリカの最新農業技術」を視察しないかとの招待をいただき、視察旅行に参加してきた。4回にわたり、そのレポートを掲載している。最終回となる4回目は、アメリカのトウモロコシについて書いていこう。
今回の視察では、穀物エレベーター業者と、製粉業者、そしてバイオフューエル研究所にも行くことができた。まず見学させてもらったのは、ミズーリ州・セントルイスにある穀物エレベーターである。カーギルの次に大きな取扱高を持つ巨大穀物商社、ADM(Archer Daniels Midland)社の施設だ。
横を流れるミシシッピ川には穀物輸送用のバージ船(日本で言う「はしけ」)の船着き場があり、構内には鉄路も走っている。もっとも現在、全取り扱い量のうち鉄道を使う割合は1%ほどしかないそうだ。ちなみにミシシッピ川沿いで、ここがADM社の一番北にある集荷拠点になる。アメリカから輸出される穀物のうち20%がセントルイスを通って輸出される(上流からやってきて、セントルスイスを通過するだけのバージ船も含む)が、そのうち6%がこのエレベーターを通るという。
ミシシッピ川を横目に見つつ簡素な事務所に入ると、パソコンが置かれた机がたくさん並んでいる。そして壁には、シカゴ穀物市場と自社の時期別、作物別の価格表が表示されている。表示は液晶画面ではなくスライドであった。
ここで行われている仕事は、農家から、いつ、どのグレードの穀物をどれだけ売るのか連絡を受け、価格交渉がまとまり農家や運送業者から運ばれてきた穀物を貯蔵し、バージ船に積み込んで、輸出拠点となっている下流のニューオーリンズに輸送することだ。この間に価格が変動すると損失を被ることになるため、シカゴ市場を利用する。たとえば、農家からトウモロコシを受け入れたら、農家に金を払うと同時に、受け入れた分だけシカゴ市場のトウモロコシ先物を売る。そうすると、価格下落リスクをなくすことができる。そのため毎日、シカゴの穀物商品取引所の価格と、にらめっこする必要があるわけだ。
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「素人はやけどする?『ハイリスク』イメージを払いたいコメ先物取引」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42532