8月下旬にテキサス州を襲ったハリケーン「ハービー」に続き、9月10日午後4時頃、大型ハリケーン「イルマ」がフロリダ州南部に上陸した。
9月11日の米WTI原油価格は、イルマによる需要減を警戒して売りが先行した。しかし、その後、主要産油国による協調減産が延長されるとの思惑から買いが勢いを増し、3営業日ぶりに反発した(1バレル=48.07ドル)。その後、OPECとIEA国際エネルギー機関が相次いで世界の原油需要の見通しを引き上げたことから、原油価格は1バレル=49ドル台に上昇した。
「ハービー」襲来直後に強気の姿勢を見せていたゴールドマン・サックスは、フロリダ州が石油製品の大消費地域であることから、「9月の原油在庫は1日当たり60万バレル増加し、10月は同30万バレル増加する」と弱気の見方を示している(9月11日付OILPRICE)。その予測に基づけば、原油在庫は2カ月トータルで2700万バレル超増加することになる。その規模は3月から8月までの減少分(7000万バレル超)の4割弱に相当するため、今後、下押し圧力がじわじわと効いてくることだろう。
これを危惧したサウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は、9月11日、アラブ首長国連邦(UAE)のマズルーイ・エネルギー相と会談し、「市場のファンダメンタルズの条件次第で、来年3月以降の減産合意延長を検討する可能性がある」ことを明らかにした。ファリハ・エネルギー相は前日にベネズエラのデルビノ石油鉱業相やカザフスタンのボズムバエフ・エネルギー相とも協議を行っていたことから、減産合意延長の可能性が高まったとの見方が市場関係者の間に広がった。
しかしOPEC全体の生産量は現在年初に比べて日量200万バレル以上増加している。原油市場を引き締めるためには減産合意の延長を協議する前に、その合意の遵守率を高める方策を検討するほうが先だろう。