近年の中国は極度のデジタル監視社会と化しているため、業界大手のシェア自転車の利用履歴は個人の信用情報と紐付けされ、荒っぽい使い方をした人は後で住宅ローンが組みにくくなるなどの社会的なペナルティを受ける場合もあるとされる。

 だが、最初から信用情報などあってなきに等しい、貧困層の「持たざる民」にとって、そんなリスクはちっともこたえない。シェア自転車のマナー問題は、今後も中国の社会問題であり続けそうだ。

日本だと間違いなく「潰される」?

 近年、中国における目覚ましいスマート化の進展によって、日本の一部の報道や識者の間では「中国は日本を超えた」といった声すら出ている。確かに、ここ数年の中国では実験的で革新的なサービスが次々と生まれ続けており、現地にいると社会がダイナミックに変化している実感を覚えることは間違いない。

 だが、新しいサービスが世の中を席巻しても、人々の心がすぐに「先進的」に変わるとは限らない。むしろ、前近代以来の泥臭くてなんでもありな中国社会に、スマホを用いたハイテクなライフスタイルが融合し、よりいっそうカオス感にあふれたサイバーパンクな世の中になっているのが実情だ。社会全体の総合的な安定度や便利さの面で、少なくとも現時点で日本が中国に負けているとは言い難いだろう。

最新技術の匂いがするシェア自転車がゴミ柵に。そこに立ちションする子ども・・・。このギャップが現代の中国である。現地報道より

・・・もっとも、仮に現代の日本で画期的なサービスが登場したとして、なんらかの問題が発生した場合、ほぼ間違いなくクレームの嵐と当局の勧告によって「潰されて」しまい、当初のパワーが失速するだろうことも確かだ。中国に日本よりも「すごい」点があるとすれば、事前にリスクが明らかに想定されているサービスでも躊躇なく実用化していく、良くも悪くもアグレッシブすぎる姿勢だろう。

 むやみに中国を賛美する気はない。ただし、チャレンジをすぐに形にして勝負するスピード感については、日本もすこしは参考にしてもいいのかもしれない。