NATO軍の任務としてウクライナ軍を指導するカナダ軍将校たち

 トランプ政権によるNATO(北大西洋条約機構)諸国に対する国防予算増額要求がますます強められている。その中で、NATOの一員でありアメリカの隣国でもあるカナダが、カナダ史上最も大規模な国防予算増額計画を打ち出した。

 ただし、トランプ政権の圧力を受けたためではない。あくまでもカナダの安全保障に関する基本戦略を達成するために導き出された大増額である。

NATO加盟国が掲げた目標値

 オバマ政権による国防予算の大削減によってアメリカの軍事力が低下したため、NATO総体としての戦力も低下せざるを得なくなった。その一方で、対IS作戦をはじめとする対テロ戦争は、収束の目途が全く立たない。また、ロシアによるクリミア併合以降、NATOにとっては原点回帰とも言える対ロシア防衛態勢を強化しなければならなくなった。こうした状況から、NATOの戦力強化の必要性は目に見えて増大しているのである。

 ところが、アメリカ軍自身が戦力低下をきたしているため、かつてのようにNATOの戦力低下をアメリカ軍が補うことはできなくなっている。要するに、アメリカだけに期待する時代は過ぎ去ってしまったのだ。

 そこで2014年、NATOは、全加盟国が個々の軍事力を強化することによってNATO総体の戦力を強化する方針を採択した。