【写真特集】米メキシコ国境で暮らす人びと

メキシコ北部チワワ州プエルトパロマスの米メキシコ国境付近で、17年住んできた自宅の前に立つ74歳の男性。国境の柵が建設される前から男性はここに住んでいる(2017年2月19日撮影)〔AFPBB News

 3000キロ以上にもわたる米国とメキシコの国境。国境警備隊の監視が行き届かず、「ボランティア」活動家が「警備」する砂漠地帯で、狙撃の標的となってしまった不法移民のサバイバル劇『ノー・エスケープ 自由への国境』(2015)が劇場公開となっている。

 不法移民を多数乗せたトラックが故障。予定は変更され、灼熱の砂漠地帯から「入国」することになった。有刺鉄線の張られたフェンスをくぐり、あっさり国境越えに成功。しかし、「夢の地」で彼らを待ち受けていたのは、苛酷な自然だけではなかった。

 異国の砂漠で、次々と射殺されていく不法移民たち。逃げ惑う者を、猟犬「トラッカー」とともに追い、襲わせ、マンハンティングさながら射殺する男・・・。

 ラテンアメリカの政治メッセージ性の強い作品への出演も多いガエル・ガルシア・ベルナルが不法移民の1人を演じるこの作品では、個人的背景の描写は最小限にとどまっているが、現実の不法移民はメキシコ人ばかりではない。

2000キロ、3000キロの旅路の末、ようやく国境へ

 『エル・ノルテ/約束の地』(1983)の主人公はグアテマラ、『闇の列車、光の旅(原題「Sin Nombre(スペイン語で「名なし」)』(2009)はホンジュラス、と、映画でも描かれている通り、2000キロ、3000キロもの旅路の末、ようやく国境へとたどり着く者たちも少なくない。

 「エル・ノルテ(スペイン語で「北」)」の約束の地での夢の生活を求めやって来た中南米の「名もなき」人々を絶望へと追いやる「狙撃者」は、「Nativism」に彩られたドナルド・トランプ政権の政策が支持される時代のグロテスクなメタファーでもある。

 『Meek’s Cutoff』(2010/日本未公開)の「移民」たちも「異国」の砂漠で絶望の淵にたたされている。

 1845年、スティーブン・ミークがガイドを務め、「約束の地」を目指す「Covered Wagon」の一団。しかし、通常ルートではない「Cutoff(近道)」の道程は苛酷を極め、水もなく、「迷ったのではない。道を見つけているのだ」と語るミークへの不信感は募る。

 そんななか、捕らえられた先住民カイユース族の男に、水のある場へと導かせることになる。ミークは経験豊富とはいえ、その地に長年暮らす先住民の知識・経験に勝るはずもない。しかし、言葉も通じない先住民を信じられるのか?

 生命の危機ともなる極限状態のなか、究極の選択を迫られる・・・。