EU域内の子ども4人に1人が貧困の危機、EU統計局

ルーマニアの首都ブカレストから北に約200キロ離れたヘテア村で、幼稚園が終わって馬が引く車に乗って家に帰る子供たち〔AFPBB News

 ロングラン上映続く『君の名は。』(2016)。その「モデル」となった飛騨地方に「聖地巡礼者」が数多く訪れている。

 インバウンドも少なくなく、「特定された」他の「聖地」にも人々は押しかけ、秋田内陸縦貫鉄道の無人駅にも「巡礼者」の姿があるという。

 秋田内陸縦貫鉄道と言えば、映画作品もある韓国ドラマ「IRIS-アイリス-」のロケ地となり、韓国人観光客で随分と潤ったことがあった。東北海道では『狙った恋の落とし方』(2008)ロケ地見たさの中国人の姿が目立ったこともあった。

 こうした「コンテンツ・ツーリズム」を語るとき、まず思い浮かぶのが『となりのトトロ』(1988)の狭山丘陵や、大林宣彦監督の「尾道3部作」。

 世界的「フィルム・ツーリズム」なら、『ローマの休日』(1953)で「王女」が束の間の自由を楽しんだローマ、『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)でトラップファミリーが歌い巡ったザルツブルク、『スター・ウォーズ』シリーズの砂漠の中の住居マトマタ(チュニジア)等々、いまや、定番観光地となったところも少なくない。

文化の一部となった名作文学ゆかりの地

 ペトラのように、遺跡そのものへの歴史的興味より、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989)ロケ地としての知名度がはるかに優るところさえある。

 人類史上最大の「ベストセラー」聖書や、西洋文明の1つの礎ギリシャ神話の舞台ともなれば、史跡そのものだし、「嵐が丘」のハワース(英国)、「老人と海」のコヒマル(キューバ)、「赤毛のアン」のプリンスエドワード島など、名作文学ゆかりの地は、既に文化の一部である。

 完全なるフィクションなら、自己完結するテーマパークも「巡礼先」。ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドでは、ハリー・ポッター、ウォーキング・デッド、ジュラシックパークなどが現役。

 かつて、ドラキュラ、フランケンシュタイン、狼男、ミイラといった「歴史的」モンスターが活躍する「ハウス・オブ・ホラーズ」もあったが、いつの間にか消えてしまった(2014年閉鎖)のは残念。モンスターなんてしょせん子供騙し、との声も聞こえてくるが・・・。

 「Hotel Transylvania」(2012)は、人間による迫害から逃れ、家族と平和な時を過ごしたい「モンスターのためのホテル」を経営するドラキュラとその娘を描くアニメ映画。

 子供がターゲットの作品名となるほど「トランシルヴァニア」という地名とドラキュラの名はリンクする。日本では馴染みがないと考えたのか、邦題は『モンスター・ホテル』だが。

 1897年、アイルランド人ブラム・ストーカーの小説が生み出したキャラクター「ドラキュラ伯爵」は、トランシルヴァニアに住むセーケイ人。とは言え、吸血鬼は(多分)実在しないから、トランシルヴァニアとて架空の地、ゴッサムシティ、ラピュタなんかと同じ、などと思っている人も少なくないだろう。

 しかし、「ドラキュラ城」たるブラン城は、ルーマニアにとって大切な観光資源として現実に存在している。

 ラテン語で「森のかなたの地」を意味するトランシルヴァニアは、ルーマニア中央部を「つ」の字に走るカルパチア山脈の北西側に広がる実在する地域。古来、多くの民族の侵入と戦禍に苦しめられてきたことから、多種多様な文化が混在する。

 西欧から見れば、エキゾチックな闇世界の不気味な伝承(folklore)に満ちた辺境である。

 神の恩寵を捨て、昼は柩で眠り、闇を彷徨う不死たる者「ノスフェラトゥ」は、永遠の生を得るため、生血を吸う。餌食となり血を汚された者は吸血鬼となり、闇の帝国は疫病のように広がる。