テロが頻発、難民移民問題には出口が見えず、英国のEU離脱など世界中が内向きで不安定な空気に包まれるなか始まった2017年。明日20日には、年始早々、その政策が注目されるトランプ次期米国大統領の就任式も予定されている。
今年は酉年、そして、米国初代大統領ジョージ・ワシントンが就任した1789年も酉年。だから、12年おきにやって来る酉年には、任期4年である大統領の就任式が必ずある。
時代の空気が政治家を選び、政治家の空気が時代を変える。
そこで、今回は、酉年に就任した米国大統領とともに、酉年の世界の空気を鳥瞰してみることにしよう。
米初代大統領も酉年に就任
1789年(己酉)、ドナルド・トランプ次期大統領の地元ニューヨークで就任式を行ったワシントンは、大陸軍総指令官という独立戦争の英雄。
しかし、戦争自体は、実質的に1781年、正式にも83年のパリ条約で終了しており、この年、世界を揺るがす最大の出来事は、独立戦争で大きな助けとなったフランスからのものとなった。
7月14日のバスティーユ襲撃に始まるフランス革命から、欧州は混沌の時を迎えることになる。1988年の映画化作も印象的な、コデルロス・ド・ラクロの小説「危険な関係」に描かれた貴族たちの退廃し切った生活は一変、命さえ危うい現実に、英国などへと亡命していく。
そんな様子を描く小説は数多いが、とりわけチャールズ・ディケンズの「二都物語」、バロネス・オルツィの「紅はこべ」の人気が高く、たびたび映画となっている。
続く「フランス革命戦争」で他国の干渉を招くなか、頭角を現してきたのがナポレオン・ボナパルト。
1801年(辛酉)、トマス・ジェファーソンが第3代米国大統領に就任したとき、すでにフランスの実権を握っていたナポレオンから、1803年にはミシシッピ川以西のフランス領ルイジアナを破格の安値で買収、広大な国土となった米国では、多くの人々が西へと向かうことになる。
欧州は「ナポレオン戦争」に突入、巨匠リドリー・スコットの監督デビュー作『デュエリスト/決闘者』(1977)には、1800年のストラスブールに始まり、アウグスブルク、リューベック、そして、ロシア遠征、と戦いに明け暮れる仏軍の姿がある。
そんななか、決闘を繰り返す2人の男を描く映像美も魅力の映画の原作は、「闇の奥」「ロード・ジム」などでも知られるロシア帝国生まれのポーランド系英国人ジョゼフ・コンラッドの短編小説。
一方、大長編の傑作、レフ・トルストイの「戦争と平和」は、ナポレオンの勢いが一気に失速することになるロシア遠征(ロシア側から見れば「祖国戦争」)をクライマックスとした壮大なドラマ。一気に読み進むのは少々きついが、映画化作で流れを知るのもいい。
ヒロイン、ナターシャをオードリー・ヘプバーンが演じた米国版も悪くないが、軍兵士を動員するなど、国力を見せつけるような物量作戦で作り上げたソ連版が、スケール感抜群で見ごたえ十分。ただし、こちらも、4部構成で7時間あまりと、少々根気が必要となるが・・・。