連邦判事は「政治的」 トランプ大統領、入国禁止令めぐり司法批判

ワシントンで開かれた全米の保安官らによる会合で演説するドナルド・トランプ大統領(資料写真、2017年2月8日撮影)。(c)AFP/SAUL LOEB〔AFPBB News

 アメリカのトランプ大統領は、日米間の自動車貿易について「アメリカは日本で自動車を販売できないのに、日本は米国に何十万台の車を輸出している」と不満を表明し、この問題について「日米で協議しなければならない」と発言した。

 安倍首相は間もなくホワイトハウスで行う日米首脳会談で、この問題を協議する予定だが、日本側は戦々恐々だ。トランプは、1980年代の日米構造協議のような通商交渉を始めようとしているのかもしれない。今では名前を覚えている人も少ない構造協議は、アメリカの仕掛けた筋違いの喧嘩だった。

「貿易赤字で損する」というトランプは時代錯誤

 トランプ大統領が選挙運動のときから言っている「アメリカは貿易赤字で損している」という話は、高校でも教わる初歩的な間違いだ。貿易赤字は輸入が輸出より多いというだけで、いいことでも悪いことでもない。「赤字」という言葉が誤解を招くが、個々の企業は海外から商品を輸入して国内で売れば利益が出る。

 2016年のアメリカの経常収支(貿易収支+所得収支)は約4700億ドルの赤字で、GDPの2.5%だった。これは1980年代と同じぐらいで、その後は2000年代のバブル期に5%を超えたが、2009年以降の不況で赤字は減った。経常収支は「国内需要-国内供給」なので、貿易赤字は景気がよくて需要が大きいことを示すのだ。

 経常収支の赤字は資本収支の黒字と同じで、アメリカの借金(海外からの資金流入)を示すが、これも悪いことではない。世の中に、借金をしていない企業はほとんどない。アメリカの借金が多いのは全世界から投資が集まるからで、これによって先進国でトップクラスの成長を維持している。

 アメリカ車が日本で売れなくても、iPhoneは2016年に日本で1473万台売れた。携帯電話で日本は、1兆円以上の貿易赤字だ。個々の商品が売れるか売れないかは国際競争力の問題で、政府が変えることはできない。もちろん貿易黒字が悪いわけでもなく、80年代のような「黒字減らし」は意味がない。