アパホテル事件を論じる際は、中国の日頃の言論弾圧を俯瞰してみることが必要だ

 中国政府が、日本のアパホテルが客室に置いている書籍にかみついた。

 この事件を論じる際は、中国政府が日頃から言論や表現の自由をいかに弾圧しているかという実態を認識することが必要だ。戦時の南京での死者が何人だったのかという論争には流されず、この言論弾圧事件の全体図と本質を直視することがまず重要だろう。

非常識すぎる中国の言動

 すでに広く報道されたように、中国外務省の報道官は1月17日の記者会見でアパホテルの客室に「南京大虐殺」や「慰安婦強制連行」を否定する内容の書籍が備えられていることを取り上げ、「日本国内の一部勢力は歴史を正視しようとしない。正しい歴史観を国民に教育し、実際の行動でアジアの隣国の信頼を得るよう促す」と述べた。

 私はこの報道を知ったとき、中国側は中国の国内にあるアパホテルに抗議しているのだろうと思った。一国の政府が、外国の領土内にある外国の民間施設内に置かれた書籍の内容に指図するなどという非常識な言動は、いくら中国政府でも考えられなかったからだ。