2017年の国際社会には大変革が起きる予兆が溢れている。日本の同盟国である米国には予測が難しいドナルド・トランプ新政権が誕生する。中国の習近平政権は2期目を迎えようとしており、「中国夢」の実現に邁進するとみられる。
「覇権を目指すのではなく、平和的台頭を目指す」という中国のごまかしに米国が気づいたのは、ここ数年のことである。
中国は1949年の中華人民共和国(中共)以来、何世紀にもわたって西洋諸国から受けた屈辱を2049年までに晴らす「100年計画」を持っていた(ピルズベリー『China 2049』)というのである。
かつて中国は、ソ連が覇権国であるとして日本や米国に同調と協力を求めていたが、その間にも鄧小平は「韜光養晦」(才能や野心を隠して、周囲を油断させ、力を蓄えていく)戦略を堅持し、今では香港の一国二制度を定めた中英共同宣言を「無効」と言い募り、南シナ海の人工島では国際仲裁裁判所の判決を「紙屑」と称するように、覇権国家を目指していることは明確である。
しかし、米国の認識は甘いし、依然として中国の本質を理解していないと言わざるを得ない。
毛沢東が率いる中共の前には、蒋介石が率いた国民党の中華民国があった。国民党と共産党はお互いを騙しつつ政権獲得のために、時には戦い時には合作して日本に立ち向かった。
この時の最大の支援国は米国であったし、1920年代以来、中国に騙され続け、中国に同情と支援を送り続けてきたからである。
以下では、蒋介石の国民党がフランクリン・ルーズベルトの米国をいかに騙し続けたか、その延長線上に南京事件を大虐殺に欺瞞していくプロパガンダがあり、米国も共犯者の一翼を担っていたことを検証する。
中国に加担する米国
ジョン・マクマリーはワシントン会議(1921‐22年)に参加し、1925年に中国駐在公使(当時の最高位)となるが、国務省としばしば衝突し、29年に辞職した中国問題の最高権威の一人と考えられていた。
1935年に「戦争が近づいている」と警告するメモランダム(『平和はいかに失われたか』)を書き、米国がとるべき政策について提言した。
共産主義の浸透を阻止しようと戦っていた日本を米国は理解しないで、最終的には日本が担っていた重荷を肩代わりする羽目になったという趣旨のことを、のちに外交史家のジョージ・ケナンは述べ、マクマリーの先見洞察力を称賛している。
マクマリーは、ワシントン条約と決議は「中国を含む諸国が、協調して努力することが望ましい」としていたが、日本は「全関係国の協調を不可能にしているような中国の条約違反をやめさせ、規則に従って行動するよう各国が一致して中国にあたることを想定しているのかどうか」を疑問視していたという。
そこで内田康哉日本代表は、「中国は約束した国際協力を忌避して、条約署名国、その中でも特に日本に対し敵意と無責任の政策をとり続けてきた」と指摘し、「日本政府は、米国政府が中国問題に関する国際協力理念の保証人であると認識している。
中国をこの国際協力の枠組みに引き戻すよう決定的な影響力を、米国が放棄するのかどうかを日本政府は知りたいと願っている」と米国政府の見解を求める。
日本にとって身近で死活的な中国問題であったが、米国の回答は「曖昧」で「あきれるほど否定的」だったので、「米国人は結局〝中国びいき″なのであり、中国の希望に肩入れすることにより、協力国の利害に与える影響を無視してでも自らの利益を追求しようとする」と述べ、自国を批判する。
そして「(日本の)1930年代の新しい強引な政策は、一方的な侵略とか軍国主義のウイルスに侵された結果などではなく、それに先立つ時期の米国を含む諸国の行為がもたらしたものだ」と結論づける。