振り返ってみたら、過去数週間は「尖閣事件」のことばかり書いてきた。確かに大事な問題には違いないが、現代中国が抱える懸案はこれだけではないはずだ。
今回は反省も込めて、尖閣事件や日中関係からちょっと離れ、胡錦濤政権を取り巻く中国の国内政治・経済事情に焦点を当ててみた(文中敬称略)。
元気のない胡錦濤総書記
気のせいか、最近胡錦濤総書記の表情がどこか「冴えない」ように感じる。特に、ソウルG20、横浜APECでの同総書記はやや精気を欠いていた。
少なくとも、筆者が北京在勤当時の2002年に颯爽とデビューし、「和諧社会論」を打ち上げていた頃の胡錦濤とは別人のように思えた。
いやいや、日本の首相と「にこやかに握手」する姿など見せられないのだ、と識者は言う。確かに日中関係ではその通りだろう。
しかし、ソウルの米中首脳会談などでの胡錦濤の一連の言動を見ていると、報道のイメージとは異なり、どこか「弱く、追い詰められた」中国を感じざるを得ない。
中国側関係者の方々には「大きなお世話」と叱られそうだが、恐らくその原因の大半は、尖閣を巡る対日関係などではなく、内政上の深刻な理由であるに違いない。
筆者の直感が正しいという前提で、胡錦濤総書記の最近の「頭痛の種」を幾つか推測してみることにしよう。
習近平人事の衝撃
第1に考えられるのは、先の「五中全会」(第十七期中央委員会第五回全体会議)で習近平国家副主席が中央軍事委員会の副主席に就任したことである。
しかし、習近平が胡錦濤の後継者となることは既定路線であり、副主席就任自体は胡錦濤にとって大きなショックではないはずだ。