今回は、ちょっと珍しい楽器の写真から、話を始めてみたいと思います。こんな楽器、ご覧になったこと、あるでしょうか?
ギターのようで、ギターでない、お琴のようで、お琴でない。
それは何かと訊ねたら・・・というような楽器ですが、これ、マウンテン・ダルシマーと呼ばれています。
別名「アパラチアン・ダルシマー」。
アパラチア山脈つまりアメリカ新大陸の楽器ですが、原型は欧州中北部の各地に存在する民族楽器を、開拓移民の人々が今の形に改めた「山の楽器」であるようです。
「山の楽器」のメカニズム
「大草原の小さな家」のような、開拓初期のアメリカ。近くに町や繁華街があるわけでもなく、時には野生動物や様々な外敵からの襲撃にも怯えながら、屯田兵のような生活の無聊を慰めるように工夫された楽器らしい。
さて、この「山の楽器」、普通のギターなどと少し違うところがあるのに、お気づきでしょうか?
少し写真を拡大してみましょう。普通のギターなどは上の写真のような形をしていて、ネックの部分を拡大すると下の写真ようになっている。
ところがアパラチアン・ダルシマーのネックをよく見てみると・・・。
ギターのように「均一」にフレットがついておらず、不均等な間隔になっている・・・。この質問、中学高校生を中心に多数の子供に尋ねてみたのですが、全員そのように答えました。
そう、アパラチアン・ダルシマーのフレット間隔は不均等なのです。開放弦を弾いたとき「ド」の音がしたとしましょう。ここで、
第1のフレットの場所で弦を抑えると「レ」
第2のフレットの場所で弦を抑えると「ミ」
第3のフレットの場所で弦を抑えると「ファ」
第4のフレットの場所で弦を抑えると「ソ」
ミとファの間の音程は半音ですね。で、そこのフレット間隔が狭くなっている・・・。
つまりこの「山の楽器」は、細かな半音刻みのフレットではなく、ドレミファソラシドの全音階が鳴るように作られた簡単な楽器、たとえて言えば、白い鍵盤だけで作られたおもちゃのピアノのように、単純な響きだけが出る楽器なんですね。