マット安川 国内のニュースではなかなか聞けない、中国の内乱状態や権力闘争。これらが今度の尖閣問題にも影響している可能性があると、今回のゲスト・宮崎正弘さんにずばり指摘・解説いただきました。
2012年の台湾総統選、中国共産党大会、米国大統領選挙まで見越して既に動き出している中国――いつにも増して熱い放送となった「ずばり勝負」の極上リポートをどうぞ。
中国共産党内で繰り広げられる権力闘争
評論家、作家。国際政治、経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。(撮影・前田せいめい、以下同)
宮崎 日本のマスコミは、中国の権力闘争について何も報道していません。ビデオ流出騒ぎや中国漁船船長釈放など、私に言わせれば枝葉のことばかり言って、本質的なことはなぜか語らない。
共産党独裁というのは、独裁権を掌握するためにすごい粛清、内ゲバがあるわけです。それは毛沢東の時代から延々と続いています。
今の中国には大きく3つのセクトがあります。「上海派」と「中国共産主義青年団」(団派)。この2つが基本構造としてずっと対立している。そこに「太子党」という革命元勲の子供や孫、言ってみればエスタブリッシュメントの2世や3世がいて、どちらかの派閥についている。
要するに、太子党というのは勢いのある方、あるいは権力のある方、金のある方につくわけです。
次の党総書記とみられている習近平(国家副主席)さんは、習仲勲という元副総理の息子で、太子党です。25年間地方を回り下積みを経験してきた。全く無名の人でしたが、3年前に突然出てきました。
父親の習仲勲は彭徳懐将軍の下にいた人で、毛沢東の反対派です。だから、毛沢東時代に干されて16年間地方に飛ばされた。文化大革命の時には拷問を受けたりした。
習近平は父親がいかにいじめられたかを見ているわけです。それがある日名誉回復したら、散っていた人たちがすがりつくように戻ってきて、権力になびいてくるという姿も見ている。ですから、習近平は基本的にニヒリストですね。