灸(『万象妙法集』嘉永3年序・刊) ウィキペディアより

 本格的に寒くなってきました。今回は、普段あまり記さない、健康にまつわる話題を記してみたいと思います。

 この半年ほど新たに「喫煙」の習慣が身につきました。と言っても、タバコを吸うわけではありません。

 「お灸」というものを、自分で据えてみることにしてみたら、体調管理が相当うまくいくようになりました。かつて芭蕉も記しています

ももひきの破れをつづり、笠の緒付けかえて、三里に灸すゆるより、松島の月まず心にかかりて、住める方は人に譲り、杉風が別墅に移るに、

草の戸も 住替る代ぞ ひなの家

 (古くなって擦り切れている股引の破れを自ら針と糸を手にとって繕い、また、やはり古くなった笠の緒もつけ替え、足の「三里」のつぼに灸をすえたりして旅立ちの準備をするはじから、心にはまず松島の月がどんなかしらと気にかかり、長く住み馴れた深川の庵は人さまに譲り、出立までの期間は門人である杉風氏の別宅に滞在して)

 (老人の私が長く住んだ草庵も 主が変わって 子供のためにひな人形を飾るようになるのかも知れぬ・・・)

(松尾芭蕉 「おくのほそ道」序章)

 芭蕉は自ら、針と糸をもつ手を「もぐさ」と「線香」に持ち替えて「足三里」というツボに灸を据えています。で、実際ここに灸を据えてから歩いてみると、足の方から勝手に前に出て行って、勝手に歩いてくれるんですね。

 これは、自律神経系、と言うより錐体外路系という方が当っていると思います、大脳から命令をいちいち出して一挙手一投足を決めるのではなく、心臓や消化管が意志と無関係に動くように、足そのものの運動が活性化されて、歩くようになる。

 私たち音楽を仕事にするものは、常に怪我や故障のリスクと隣り合わせですから、体のメンテナンスには随時気を遣っていますが、「三里」に限らずちょっとした「喫煙タイム」お灸を据えてのコンディション調整がとても有効なので、ここ半年ほどですっかり習慣になってしまいました。