「資生堂」サイエンス×アートを融合したデザイン展示会

「資生堂」サイエンス×アートを融合したデザイン展示会から〔AFPBB News

 突然ですが「イノベーション」という言葉の意味を問われたら、どのようにお答えになるでしょうか?

 「日本語の訳語を当てよ」と言われたら、何と訳せばよいでしょう?

「百年の誤訳」を考える

 「技術革新」と答えてはいないでしょうか。実際そのように訳しているケースが非常に多い。「それはおかしい」と東京大学ものづくり経営研究センターの藤本隆宏教授は指摘します。

 イノベーションという言葉がいつどのように導入されたかは、はっきりしています。

 1911年、オーストリアの経済学者、ヨーゼフ・シュンペーターが定義した「イノベーション」とは「既存のシステムの創造的破壊と再結合」による社会革新を指すものであるとされる・・・。

 こんなふうに書くと、格好よさげではあるけれど、今一つ分かりにくいのも確かです。これを「分かりやすく」技術の革新である、あるいはもっと露骨に科学技術の革新だと訳した人が100年ほど前の日本にいました。

 それが誰なのか、詮索しても大して意味はないので、ここでは深追いしません。が1911年と言えば明治44年、日本はようやく日露戦争に勝って列強に伍して行こうという時期であり、また何よりも、大きな「技術革新」の波が押し寄せて来た最中でもあった。

 1910年代と言えば、すなわち第1次世界大戦の時代です。

 善し悪しとは別に、戦時技術に財力が傾注され、様々な「軍事技術」が革新されていった。

 それらは戦後、直ちに民生に転用され、私たちの生活に本質的な影響、つまり既存のシステムの<創造的破壊>と<再結合>をもたらしていった。

 端的な例が「モータリゼーション」でしょう。自動車産業の成立と興隆、そして社会への普及・浸透は、実際に既存の社会システムを(当事者たちは必ずしも<創造的>とは思わなかったでしょうが)破壊してしまった。