【写真特集】「パリモーターショー2016」

パリモーターショーで、メルセデス・ベンツの新型「ジェネレーションEQ」を披露するダイムラーのディーター・ツェッチェ最高経営責任者(2016年9月29日撮影)〔AFPBB News

 前回、このコラムとしては珍しく、お灸やツボの話を記しました。

 もちろん私はツボや東洋医学について全く素人ですが、患者としては長くこうしたものの厄介になっています。

 そこで、これらを考えるとき、実はしばしば経営の話題を連想するのです。突飛に聞こえるかもしれませんが、野中郁次郎さんの仕事を常に想起してしまうのです。

 ポイントは「暗黙知」。

 元をたどればハンガリーの経済学者カール・ポランニーによる概念ですが、これを東洋的な観点で捉え直したのは、野中さんの貢献が大きいと思います。

 文字や言語で明示化しやすい「顕在知」と対照するとき、21世紀の「暗黙知」は「非言語的、ニューラルに構成されたネットワーク知」と言うことができるように思うのです。

 AIの話題で「人間の仕事がなくなる」系の脅しに対して「絶対にそんなことはない」と安心していられるのは、デジタル記号ベースで量子化された電子計算機システムの粗略さで、生体の精妙なニューロネットワークシステムを代替することなど、原理的にできるわけがないと知れているからです。

 しかし、アナログなセンサーを含む系となると、やや話が変わってきます。

 人間よりはるかに細かなものが判別できる機器、人間よりはるかに短い時間が判別できるシステム。こういったものが、ほかならぬ人間自身もシステムの中に組み込んだ形で作動する「マン+マシン」の総体が、最も多くの可能性を秘めていると思うのです。

欧州の移民対策

 11月末、ドイツのミュンヘンでミーレの首脳と意見を交換する機会がありました。ミーレ(Miele)はドイツの白物家電大手メーカーです。ミュンヘンの街中を歩いているとミーレの洗濯機と乾燥機だけが並んだコインランドリーをよく見かけます。

 質実剛健を旨とする、ドイツを代表する家電メーカの1つと言っていいでしょう。そんなミーレの生産ラインは、20世紀からの機械化に加え、2011年以降はインダストリー4.0の追い風を受け「スマート工場化」が急速に進んでいるそうです。

 ラインを進んで行く何千もの部品や製品の中から、例えばセンサーが見つけ出すのが得意な不具合は数多い。

 「それでも・・・」とドイツ連邦工学アカデミーの会合でミーレ首脳は留保します。