画期的さつまいも「べにはるか」がヒットした理由

さつまいも400年の歴史と現代の科学(後篇)

2016.11.18(Fri)漆原 次郎

 従来、1985年品種登録の「ベニアズマ」と、1945年育成の「高系14号」が、東西の二大勢力を張る品種だった。そこに九州沖縄農業研究センターが開発した「べにはるか」が割って入ってきているのだ。

 品種登録から6年が経った現在の「べにはるか」のシェアは、焼酎用や工業用などを含む全用途のさつまいもの品種の中で「5〜6%」(片山氏)という。食用の二大勢力「ベニアズマ」と「高系14号」が「それぞれ11〜12%」(同)というから、確実にシェアに食い込んでいると言える。

 食感と甘味の点で、従来品種にない“空白域”に「べにはるか」が入り込んだ。さらに、総合力でも優れていた。これが、ヒットの理由のようだ。

「従来品種の『ベニアズマ』はホクホク系。『高系14号』はホクホクとネットリの中間。そして、どちらも甘味はさほど強くはありませんでした。しかし、近年の傾向として若い世代はネットリ系を好み、甘味については強いほど好ましいことが分かってきました。そこで、そこに狙いを定めたのです」

 さつまいもの食感がホクホク系かネットリ系かは、おもにデンプン含量の多少で決まる。甘味の強さについては、さつまいもに含まれるβ-アミラーゼという糖化酵素の活性がカギを握ることが知られていた。つまり、デンプン含有量は適量に抑え、かつβ-アミラーゼの活性が高い品種が「べにはるか」だった。

 さらに、形が揃っている点や、病気への抵抗性が強い点、そして収量性の高い点など、「べにはるか」はおしなべて優秀な品種だったようだ。

「私は『べにはるか』の開発が進んでいたころ、九州沖縄農業研究センターにいたのですが、食味試験をすると、味見をするパートさんたちから『この系統はおいしい』ととても良い評判だったのを覚えています」

「べにはるか」の父は「春こがね」、母は「九州121号」。これら父母もそれぞれ「ベニアズマ」と「関東103号」、また「九系61」と「九系58」を交配して生まれたものだ。ほとんどの交配系統が新品種まで至らない中、優れた系統だけが新品種として登録され、さらにその一部だけがヒットする。それが「べにはるか」だったわけだ。

新品種「べにはるか」と従来品種「高系14号」。下は、蒸した「べにはるか」の中身。(写真提供:農研機構)
拡大画像表示
この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る