画期的さつまいも「べにはるか」がヒットした理由

さつまいも400年の歴史と現代の科学(後篇)

2016.11.18(Fri)漆原 次郎

美味しさのカギ握る甘味の新事実も

 その後も、さつまいもに関する研究成果が上がっている。人々の嗜好性に欠かせない甘味についての新たな要因が、農研機構の研究者により解明されている。

 甘味の要因として、β-アミラーゼの活性の高さがあるということは前述の通りだ。加えて、デンプンが糊化し始める温度が低いほうが、加熱調理時の甘味が増すことを、片山氏と同ユニットの中村善行上級研究員が明らかにした。

「糊化温度が低いほうがβーアミラーゼが早く働き始めるため、甘くなりやすいのです」と片山氏は説明する。「糊化温度が低いこと」も、育種における重要な尺度に加わったわけだ。

 品種改良もさらになされている。

 2014年には「あいこまち」が登録された。収量や糖度などの食味は「ベニアズマ」並みに優れている。「『ベニアズマ』の誕生から時間が経ち、同じ『ベニアズマ』でも品質に徐々にバラつきが出てきています。代わりになるような新品種を作れないかということで開発しました」。

 さつまいもは、りんごと同様に酵素が作用して調理後の黒変が早いが、「あいこまち」はその変色が少ない。そのため、いもようかんや大学いもなどの加工品にも適している。

新品種「あいこまち」と従来品種「ベニアズマ」。左上(四角枠)は、蒸しいもペースト。「あいこまち」のほうが黒変しづらい。(写真提供:農研機構)
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地域ブランドや海外輸出を視野に育種

 1年に約1種ほどの頻度で新品種が生まれている。今後も食感、糖度、収量、耐病性などを改善した新品種が確実に出続ければ、いつかは“出尽くした”状況にならないだろうか。

 片山氏は「産地間の競争で考えると、自分たちの産地独自で良質なさつまいもが穫れるということが重要になってきます。地域ブランドとなるような品種が欲しいという声に応えてもいきたいと思っています」と答える。

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