画期的さつまいも「べにはるか」がヒットした理由

さつまいも400年の歴史と現代の科学(後篇)

2016.11.18(Fri)漆原 次郎
片山健二(かたやま けんじ)氏。農研機構次世代作物開発研究センター畑作物研究領域カンショ・資源作物育種ユニット主席研究員。農学博士。入所以来30年近く、デンプン特性の改良に関する育種研究や新品種の開発など、さつまいもの研究に取り組む。2005年、日本育種学会奨励賞を受賞。

 まず、交配して種を得る。ただし、さつまいもは熱帯原産のため、温帯の日本では花が咲かない。そこで、同じヒルガオ科のキダチアサガオを台木に、接ぎ木をして花を咲かせ、受粉させて種を得るのだ。

 種を苗まで育てて畑に移植し、1株からさつまいもを1個ずつ取る。この際、いもの付きの悪い株は取り除く(実生個体選抜試験)。

 そして、選抜したさつまいもを冬に貯蔵しておき、翌春に種芋として苗床に伏せ込み、萌芽した苗8本をさらに畑に移植して育てる。すると1系統(種芋)から20個ほどのさつまいもが穫れるので、どの系統が良質かを試験する(系統選抜試験)。

 その後も、生産力に関する成績などを見て(生産力検定試験)合格すると、「関東何号」や「九州何号」といった系統番号がつく。「全体的には系統の数を絞り込みつつ、選んだ系統の種芋の数は増やしていくのです」。

 その後は、関東や九州などの各県の試験場で各種栽培試験をしてもらい、「この系統は優れているので品種にしたい」との要望が出れば、農研機構で審査をし、通過したものを新品種として登録出願するのだ。ここまで最低8年はかかる。

 だが、新品種がすぐ流通するわけではない。「農家の方々が実際に新品種の苗を買うまでにさらに3~4年かかります」と片山氏は加える。

 新品種の販売許諾権を得た種苗会社は、社内でさらに良質の系統を選抜したり、感染を防ぐためウイルスフリー苗を増殖したりする。ここでも3~4年かかる。手塩にかけられた新品種をようやく農家が購入し、栽培する。

「良い品種と認められれば、そこからじわじわ広がっていきます。そうでなければ、あまり広がらずに終わってしまいます」

二大勢力を打ち破る「べにはるか」の誕生

 地道な育種作業の中、近年まれに見る良質な品種が農研機構から誕生した。2010年に品種登録された「べにはるか」だ。

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