一匹の妖怪が日本を徘徊している - 「2島+アルファ」という名の妖怪が。
2000年3月のロシア大統領選挙で当選し、同年5月大統領に就任したウラジーミル(V)・ プーチン新大統領は同年9月3日、サハリン島ユージノ・サハリンスク市で開催された「PSA(生産物分与契約)-2000会議」に出席後、訪日しました。
筆者もこのPSA会議に参加しました。プーチン大統領の小柄ながら精悍な筋肉質な体からはオーラが発散し、近寄りがたい雰囲気がありました。
この会議後に日本を公式訪問して、当時の森喜朗首相と会談。この時、プーチン大統領は唐突に「日ソ共同宣言を確認する」と発言。この発言の真意を巡り、日露双方にて侃々諤々の論議が湧き起こりました。
今年2016年10月19日は日ソ国交回復共同宣言60周年記念日でした。安倍晋三首相は日露関係改善、特に領土問題解決に積極的に取組む姿勢を示しており、この一環として2016年5月6日にはロシアの黒海沿岸ソチでプーチン大統領と非公式首脳会談を実施、日露関係における「新しいアプローチ」を提案。
その後、両首脳は9月2日の第2回東方経済フォーラム(於 ウラジオストク)で非公式首脳会談を実施。2016年12月15日に安倍首相の故郷、山口県で公式首脳会談を実施するで合意しました。
一方、プーチン大統領は2016年5月20日、「(北方)領土は取引しない」と事前に日本側を牽制しましたが、日本側と安全保障問題を協議する構えも見せており、2016年末には日露関係は新たな段階に入ることも予見されます。
では、1956年10月19日に締結された日ソ共同宣言とは何でしょうか?
結論から先に申せば、日ソ共同宣言をもって「2島(歯舞・色丹)返還、残り2島は継続協議」と誤解されている方もおられるようですが、実は違います。
共同宣言には、「平和条約締結後、2島を日本に引き渡す」としか書いてありません。すなわち、「2島を引き渡して終わり」、それが日ソ共同宣言です(後述)。それ以上でもそれ以下でもありません。
他方、日露経済関係では、ロシア側は日本からの経済支援を期待していますが、日本側は北方領土問題と絡めてか、異様に盛り上がっている感が否めません。
長年日ソ・日露ビジネスに従事してきた筆者の経験でも、日露経済協力案件がこれほど盛り上がったのは初めてのことです。まさに、日露経済協力案件百花繚乱の時代とも言えましょうか。そこでまず日露経済協力案件を巡り、日露が提案している経済協力案件を概観したいと思います。
日露経済協力案件/日本側提案8項目
日本政府がロシア側に提案している8項目に関しては日系各紙がほぼ連日大きく報じていますので、ここでは項目のみ列挙します。
医療・健康(ロシア極東に日本型の病院建設など)/都市づくり/中小企業育成/エネルギー協力/産業多角化/極東産業振興(ハバロフスク空港整備など)/先端技術(原子炉廃炉に向けた共同プロジェクト)/人的交流