半導体ファブレスの米クアルコムが、10月27日、オランダのNXPセミコンダクターズ(以下「NXP」)を470億ドル(約4.9兆円)で買収すると発表した。この買収規模は、米AvagoTechnologiesが米Broadcomを買収した金額の370億米ドル、ソフトバンクが英ARMを買収した3.3兆円を上回り、半導体業界で過去最大となる。
クアルコムは半導体設計に特化したファブレス企業で、スマホ用のプロセッサを主力事業とし、2015年の世界半導体売上高では、インテル、サムスン電子、SK Hynixに次ぐ4位、ファブレスの売上高ランキングでは世界1位の座にある。
一方、NXPは、エレクトロニクスメーカーのフリップスの半導体部門が独立した垂直統合型(IDM)の半導体メーカーで、車載用や認証端末用等の半導体が主力であり、2015年に旧モトローラの米フリースケール・セミコンダクタを買収し、世界半導体売上高では7位、車載半導体ではルネサスや独インフィニオンを抜いて売上高1位となっている。
したがって、この買収を一言でいえば、「ファブレス世界1位のクアルコムが、車載半導体世界1位のNXPを買った」ということになるであろう(図1)。
(出所:IHS)
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クアルコムはなぜNXPを買収したのか?
クアルコムは、スマホ用プロセッサで一時は世界半導体売上高3位にまで上り詰めたが、台湾メディアテックが台頭し、スマホメーカーがプロセッサを内製化してクアルコム依存度を下げる動きが広がり、さらに、スマホの出荷数自体が飽和してきた。その上、クアルコムにとってもっと大きな市場となっている中国で、独占禁止法に違反したとされて1150億円の罰金を払わされた。