イギリス・ケンブリッジにあるARM本社の正面玄関(出所:Wikimedia Commons

 7月18日、海の日の月曜日、私は、ソファに転がって夜7時のHNKニュースをぼんやり眺めていた。すると、「ソフトバンクが英ARMを3.3兆円で買収」が報じられた。私は全身に電流が走ったように起き上がり、思わずソファに正座してニュースに見入ってしまった。

 第一声は「何だってー!?」、第二声は「まさか!」であった。あまりのことに驚き、そんなことがありえるのかとにわかには信じられなかったのだ。

 しばし呆然としたが、数十分もすると我を取り戻し、孫正義社長の壮大な野望がじわじわと理解できるようになった。そして、「10年前から買収を考えていた」という孫社長が恐ろしいとすら感じた。

市場も世間も理解できていない

 ところが、翌朝に日経新聞やネットの記事などを見て、市場も世間もこの買収をあまり評価していないことが分かった。特に、43%以上のプレミアを乗せて3.3兆円もの大枚をはたいたことに批判が集中している。

 まず、ソフトバンクの株価は、1日で11%下落した。これが、市場がこの買収を良く見ていない何よりの証拠だ。

 この株価下落について、SMBC日興証券シニアアナリストの菊池悟氏は、「ソフトバンクグループの既存事業とアーム・ホールディングスとの具体的な相乗効果が見えてこない。アーム株の買い付け価格は買収発表前の同社株価より4割も高く、ソフトバンクの株価が19日に下落したのは当然と言える」とコメントしている(日経新聞7月19日)。

 また、あちこちで指摘されているのは、「ARMは2015年の売上高は1791億円、税引き後の利益は578億円と優良企業だが、この利益で3.3兆円を回収するには50年以上かかる」という批判である。つまり、孫社長の独断の無謀な買収であるとう批判が多かった。