政府は来週、「事業規模で28兆円」という大型の補正予算をまとめる予定だ。参院選で「アベノミクスのエンジンを最大限にふかし、デフレからの脱出速度をさらに上げる」と繰り返した安倍首相が出してきたのは、昔ながらの自民党のバラマキ財政だ。
だが中身を見ると「真水」といわれる財政支出は3兆円で、大部分は来年度の当初予算まで含む「水増し」だ。中には貧困層に1万5000円ずつ金券をばらまく計画もあり、無差別に現金をばらまく「ヘリコプターマネー」の効果を狙っているようだ。
ヘリコプターマネーはすでに始まっている
これは先日来日して安倍首相と会談したバーナンキ前FRB(米連邦準備制度理事会)議長の影響ではないかといわれているが、それは錯覚だ。日本では、事実上のヘリマネは財政ファイナンスという形ですでに始まっている。日銀の国債購入額は新発国債の額を上回り、金利もゼロなので直接引き受けとほとんど変わらない。
国債と違って金券は償還しなくてもいいというのは誤解だ。金券も日銀券も、日銀の民間に対する負債で、その原資は民間銀行の預けている日銀準備預金だ。今はゼロ金利だから金利負担がかからないが、金利が上がったら準備預金に金利が発生するので、国債と同じだ。
「日銀保有の国債を無利子の永久債にすれば、政府と日銀を合算した統合政府部門では借金ゼロになる」というのも錯覚だ。今でも日銀の得た国債金利は日銀納付金として国庫に納めるので、日銀は無利子である。永久債といっても、売買も繰り上げ償還もできるので同じことだ。
今マイナス金利の「国債バブル」で何も起こらないのは、ゼロ金利による一時的な現象だ。そのうち財政がさらに悪化し、国債が消化できなくなって金利が上がったら国債価格が暴落し、地方金融機関の破綻や激しいインフレが起こるおそれがある。
国債の需給状況から考えても、今のような異常な状況がいつまでも続くことはありえないが、財政危機が顕在化するのはまだ先だろう。今のうちに出口戦略の準備をしておかないと、金利が上がり始めてからでは遅い。