最近は、多くの家庭で犬や猫、小動物が飼われています。家族の一員としてペットを可愛がっている方も多いですが、やはり相手は動物ですから共に暮らすにはそれなりの注意が必要です。
最近、私の外来には、飼い犬に噛まれた方や、飼い猫や野良猫に手を出して引っ掻かれたり噛まれたりした方が受診しています。
先日も、私の友人が飼い犬に手を噛まれたため受診されました。普段はおとなしい犬なのですが、眠りかけでうとうとしている時に頭をなでてしまい、反射的に噛みつかれたようです。
手を噛まれた翌日でしたが、左手の人差し指と中指の第二関節のあたりに、2、3箇所、噛み痕がありました。傷は小さく浅かったのですが、周辺が赤黒くなり腫れていました。
痛みも強く、熱感もありました。傷口はきれいでしたが、抗生剤と鎮痛剤を処方することにしました。
犬に噛まれた、怖いのは狂犬病より破傷風
動物咬傷は感染のリスクが高い外傷の1つです。口腔内には多数の細菌がいるため、傷口から細菌が侵入しやすいのです。
咬傷への抗生剤予防投与については賛否両論ありますが、適切に抗生剤を選んで投与することがおおむね推奨されています。
そして、ここで1つ忘れてはいけないのがワクチン接種です。
「犬に噛まれたから狂犬病のワクチンかしら?」と思う方もいるかもしれません。思ってもらえるだけマシですが、ちょっと違います。
日本国内では狂犬病予防法があり予防対策がとられています。「犬」と書かれた予防接種済みを示すシールが玄関先に貼られている家を見たことがありますよね。飼い犬には登録制度があり、定期的な犬の狂犬病予防の注射が義務づけられています。
このほかに野犬を捕獲することで狂犬病予防対策としてきました。現在、日本は国内での狂犬病感染がない国の1つなのです(例外として、近年、海外での咬傷が原因で、国内で発症した例が数件あります。海外に渡航する際には狂犬病感染のリスクに応じて人間も予防接種が必要です)。