「うちの連中は全然あかん。いつまで経っても育ちませんわ」
社外の人と雑談する時は、自分の部下のことを卑下してこんなふうに冗談半分で話している人を見ることも少なくない。
そんななか、ある不動産業を営む社長は、初めてお会いした際に会社の部下の話になり、部下のことをこのように話されていた。
「うちの部下はほんと優秀なんです。会社では自分はほとんど何もやってなくて、彼らが仕事をよくやってくれるので、感謝感謝で頭が上がらないんです。うちの会社は彼らのおかげでここまでやってこれてるんです」
ピグマリオン効果で業績向上
確かに部下の人たちが優秀なのだろう。しかし、そのような優秀な人たちがこの社長についてきているということは、この社長はそれだけの人望を備えていると言える。
あるいは、元々は優秀ではなかった部下たちを優秀と言えるほどに成長させてきたのかもしれない。いずれにしろ初対面の人間の前でも、部下のことを褒め、部下に感謝する姿勢に私は強い好感を覚えた。
以来、この社長とは長いお付き合いをさせていただいている。今ではこの社長は初めてお会いした頃とは比較にならないほどに大きく会社を成長させている。
この社長が部下を褒める言葉を聞いた時、私はこんなことを思った。
部下が頑張ってくれるから部下のことを良く思えるのか。部下のことを良く思っているから部下が頑張るようになったのか。
おそらく両方ともが正解であり、両方が相乗効果を発揮して会社の成長をもたらしたのではないかと思う。
こんなふうに思ったのは人間の心理には「ピグマリオン効果」という効果が働くからである。